ITマネジメントの対象は、常に高度化し複雑化している。経営とITの戦略的融合や、IT投資最適化、グローバル対応、ソーシングなどだ。ITサービス業界にすれば、これらの課題に対し、ビジネスの成長と競争優位に直結するITマネジメントの最適解を提供できなければならない。

ガートナー リサーチ ジャパン リサーチ部門代表 バイスプレジデント
山野井 聡

■ガートナーの推奨事項
・日本のITサービス産業は、市場が成熟市場へ移行することを前提に事業戦略を練る
・ITシステムの調達方法における、多様化の波に乗る
・自社のITサービスモデルを見直し、得られた原資を市場展開など、成長戦略に継続的に投資する

成熟化が進む国内ITサービス市場

 世界のITサービス市場規模について、ガートナーは2011年に約8140億ドルになると予測している。日本市場は、そのうち約14%のシェアを占める。一国の市場規模としては、米国に次いで巨大なものだが、成長性は最低である(図1)。

図1●日本のITサービス市場
図1●日本のITサービス市場
市場規模は世界第2位だが、成長率は世界最低
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 ITサービスと一口に言っても、様々なセグメントから構成されており、市場規模と成長性は異なる。ガートナーでは、市場の構成セグメントを次のように定義している。

■プロフェッショナルサービス
・コンサルティング
・アプリケーション開発/インテグレーション
・ITO(IT運用管理に関するマネジメントサービス)
・BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)/情報処理
■製品保守サービス
・ハードウエア製品保守
・ソフトウエア製品保守

 図2は、縦軸に成長率を、横軸にビジネスモデルをとり、これらのセグメントをマッピングしたものだ。フロー型は、比較的短期間なプロジェクト型ITサービスを、ストック型は複数年契約型のITサービスを指している。円の面積が市場規模を表している。

図2●日本のITサービス市場の展望
図2●日本のITサービス市場の展望
セグメント別に規模と成長性をみた
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 市場規模が大きいのは、アプリケーション開発やITO(IT基盤運用)だ。しかし、案件ごとの規模は縮小傾向にある。相対的に成長性が期待できるのは、ITO(アプリケーション運用)やBPOの領域である。IT運用コストの削減に直接的な貢献が期待できるものの、規模は依然として小さい。ハード製品保守サービスは、製品市場の下落により引き続きマイナス成長が予測される。