企業情報システムは今、これまでになく、複雑な環境の変化に迅速に対応できるアジリティや柔軟性、使いやすさに加え、さらなるコスト面での競争力が求められている。そこでは、情報を活用する新たな手法やテクノロジー、アーキテクチャへの理解が、ますます重要になる。本稿では、環境変化に向けた企業の分析力や意志決定力を強めるためのBI(ビジネスインテリジェンス)について、最新のテクノロジートレンドと、成功へのポイントを紹介する。

ガートナー リサーチ バイス・プレジデント
堀内 秀明

 BIに対する一時期の熱狂的な期待は、沈静化したように見受けられる。だが「情報を活用したい」あるいは「しなければならない」という企業の思いは一向に衰えていない。2011年に企業が取り組むべき事項として、最初にガートナーの推奨事項を提示し、以後にその背景や理由を説明していく。

■ガートナーの推奨事項
・BI導入の議論では、ビジネス上の成果を出すことにこだわる
・成果を出すに当たり、支援組織としてBICC(BIコンピテンシセンター)を立ち上げる
・新たなテクノロジーの採用によって、不可能が可能になり得ることを再認識する

BIを牽引する組織を設立する

 企業のIT部門にすれば、BIの取り組みにおいては、最新のテクノロジーや製品に目が行きがちかもしれない。しかし、成功のカギを握るのは、組織や現場がツールや情報自体を使いこなせるかどうか、自らの情報活用成熟度が向上することで生じる要件の変更に対し柔軟に対応できるかどうか、である。

 その実現に向けては、必要になる限られたリソースを集約し、育成するための支援組織の設立が有効だ。この組織を、ガートナーでは「BIコンピテンシセンター (BICC) 」と呼んでいる。日本においても既に、様々なBICCが設立されている。

 図1は、BICCを構成するビジネスと、IT、分析に関するスキルや経験をまとめたものである。例えば、IT部門が中心になってBICCを形成する場合、ビジネスと分析に関する経験やスキルを集中的に強化することになる。

図1●BIを牽引する組織「BIコンピテンシーセンター(BICC)」が持つべき三つのスキル分野
図1●BIを牽引する組織「BIコンピテンシーセンター(BICC)」が持つべき三つのスキル分野
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 様々な事例を見ると、BICCが機能し、成果を得るためには、「ビジネスプロセスでのマネジメント経験」と「経営層とのコミュニケーション能力 (説得力)」が備わっているかどうかが非常に重要だといえる。BICCのリーダーに、幅広く信頼され、社内に影響力があるビジネス部門の上位マネジメント経験者が就けば、その活動は成功し、ビジネスにおいて目に見える成果を挙げることに1歩近づくことになる。

 しかし、さらに高度な情報活用を指向する場合は、多くの情報ソースの中から適切なものを見つけ出し、様々な分析テクニックを駆使する必要性が増す。そのためBICCは、ビジネス、IT、分析の三つのスキルをバランス良く発揮する必要がある。