経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、ビジネスやアプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。オラクルが主張する基盤像を紹介する。

“変化対応力”が企業競争力を高める

 景気の低迷、円高、新興国の台頭など、外部環境は依然として厳しい状況にある。加えて将来が不透明なことから、「企業競争力を維持、高めるための“変化対応力”をいかにして企業活動全体に備え付けるか」ということに、さらなる注目が集まっている。

 変化対応力は、「外部環境の変化に応じて収益と費用のバランスを迅速に変更できること」だと言い換えられる。新たな事業機会を見出したら、競合他社に先駆けてその市場に参入し、新たな収益源を確保する。もしくは、市場環境の悪化によって引き起こされた収益の減少に応じて、それに要する費用を適正化し利益を維持する。こうした経営/事業戦略の転換を迅速に実施できることが、企業に求められる変化対応力ではないだろうか。

 一方でここ数年、クラウドコンピューティングという情報システムの新しい概念が話題になっている。これは、「使いたい時にすぐ利用できる」「止めたい時にすぐ止められる」「利用した分だけ費用を支払う」といった特性や期待が、将来が不透明な状況下における変化対応力を実現する術の一つとして、適当だと考えられているためだろう。

 企業情報システムにも変化対応力、すなわち「システムの立ち上げ、変更に要する時間、労力、費用の適正化」と「企業情報システムのTCO(所有総コスト)の最適化」が求められている。オラクルは、これを実現できるIT基盤こそが、「次世代IT基盤のあるべき姿」だと考える。

システムの複雑化が高コスト体質を招く

 現在の企業情報システムに要する費用の内訳を整理すると、既存システム資産の維持に年間IT予算の約80%が割かれ、新規の戦略投資には約20%しか投入できていないと言われている。この統計データは、既存の企業情報システムが高コスト体質になっていることの一つの表れであり、戦略的な新規IT投資を阻害している一因であるとも考えられる。

 このような事態になる理由は様々だ。だが、典型的なケースの一つに企業情報システムの複雑化が挙げられる。個別最適のもと、時系列的にシステム化を進めてきた結果、企業内のシステム環境は異種混在型の極めて複雑な状態になってしまっている。

 複雑な環境であるがゆえに、企業情報システムのどの部分にどれだけのコストがかかっているのか、また、そのコストが適切かどうかの判断も困難だ。結果として企業情報システムのコストを最適化する術を失っている企業が少なくない。

 複雑な環境が、企業の迅速な変化対応の足かせになってしまっている例も散見される。経営・事業戦略の変更に伴ったシステム変更・連携に多大な時間や、労力、費用を要してしまうからだ。従って、企業情報システムのTCOを最適化し、システムの変化対応力を高めるために、システム環境の複雑性をいかに解消していくかという観点が重要になる。

 もちろん、企業情報システムのTCOを最適化する解決策としては、様々な手段が考えられる。サーバー統合によるアプリケーション実行環境の集約化、IT基盤の共通化、クラウドコンピューティングの活用などだ。しかし、これらの解決策を採用する際には、システム環境の複雑化をいかに抑制するかという視点を忘れてはならない。