明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

 21世紀最初の10年が終わり、いよいよ次の10年がスタートしました。この節目に、ITの世界は激動の時を迎えようとしています。

 SaaSPaaS、IaaSといった各種クラウド・サービスの導入や、企業によるプライベートクラウド構築の取り組みが加速。一方で、スマートフォンやタブレットの爆発的なヒットにより、新たなコンピューティング・スタイルが急速に広がりつつあります。ネットからダウンロードして利用する“アプリ”の市場拡大、あるいは、Twitterや各種SNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)の普及が、この変化を後押ししています。

 こうした新しい波の全体を、広義のクラウドととらえることもできるでしょう。ITproではその最前線を、「エンタープライズ・クラウド」「iPad&iPhone」「Android Developers' Inn」などのサイトを通じて、詳しくお伝えしてきました。

 注目すべきは、これらの動きが企業の情報システムから個人のライフスタイルを支えるIT活用に至るまで、幅広いフィールドでほぼ同時並行的に起こっていることです。ITproは「エンタープライズICTの総合サイト」ですが、エンタープライズICTの行方をコンシューマICTと完全に切り離して議論することは、もはや意味をなさなくなってきました。文字通り、ITの世界は劇的に変わりつつあります。

限られたビジネスチャンスを生かすためのクラウド

 いま目の前で起こっている変化は決して一時的なものではありません。エンタープライズの世界におけるクラウドの登場と普及は、オープンシステム、インターネットに次ぐ第3のパラダイムシフトであるとの認識が既に定着しつつあります。

 では、企業はこの変化をどのように受け止め、消化し、ビジネスに生かしていこうとしているのでしょうか。

 幸いにも、緩やかに進む景気回復への見通しから、過去数年にわたって抑えられてきた企業のIT投資は、ここにきてようやく“戻り”つつあります。各種の調査結果を見る限り、2010年の後半から2011年にかけて、企業が徐々にIT投資を増やそうとしている傾向が明らかになってきました(「IT投資動向は回復基調」、「約3割の企業が2011年度のIT予算を増やす」)。

 といっても、IT投資に対する考え方は、リーマンショック以前とは大きく様変わりしています。企業の経営トップやCIO(最高情報責任者)、IT部門のマネジャーやリーダーは、継続的にコストを抑制することを大前提として、いかに限られたビジネスチャンスを生かすか、そのためにITをどう活用するか、という課題を突き付けられているからです。

 その点、システム・リソースの拡張性や、システム・コストの変動費化によってビジネスに貢献しうるクラウドは、IT投資の対象として最重要の選択肢の一つと言えます。クラウドの普及が加速すると考えるのは、そのためです。

 特に今年は、企業ユーザーによるプライベートクラウド構築や、それを支援するITベンダーの取り組みが本格化するとみられています。日経コンピュータと日経BPコンサルティングが昨年9月に実施した調査でも、そうした傾向がはっきり出ました(「約3割の企業がクラウドサービスを利用」)。特に「自社のハード/ソフト資産で作ったグループ共通のシステム基盤」をクラウド化して利用している企業は全体の28.2%。「1年以内に利用を予定」「検討中」の企業を含めると全体の6割近くに達しています。

 これらの取り組みによって、企業はどのようなビジネス上の成果を期待しているのか。仮想化やNoSQL(クラウド環境での拡張性を重視し、RDBMSとは異なる技術を採用したデータベースソフト)などのキーテクノロジーを駆使して、どのようにクラウドの仕組みを構築するのか。こうしたクラウドの最前線の情報を、ITproは2011年も総力を挙げてお伝えしていきます。

 昨年に続き、スマートフォン、タブレット、携帯電話といったモバイル端末の最新動向や、それらのプラットフォームに向けたソフト開発支援の情報も積極的に発信していきます。加えて、Androidアプリiアプリの開発者向けコンテストなどを通じ、ITproはソフトウエア市場の活性化とソフトウエア開発者の支援にも貢献したいと考えています。TwitterやSNSがビジネスに与えるインパクトについても、昨年以上に目を向けることになるでしょう。

 さらに、「情報爆発」、「IFRS(国際会計基準)」、「仮想化」、「中国・アジア」といった、エンタープライズICTの今後を考えるうえでカギとなるサイトでは、昨年以上に日経BP社の各専門媒体と連携し、より新鮮な情報提供に努めます。