米セールスフォース・ドットコムが、アプリケーション開発・実行環境をサービスとして提供するPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の種類を増やした。12月7、8日に米国で開催した開発者会議「Dreamforce ’10」で、RubyのPaaSである「Heroku」の運営元、米ヘロクを2億1200万ドルで買収することや、データベースサービス「Database.com」を発表した。

 同社のPaaSは現在、Webアプリケーション用の「Force.com」のみだが、HerokuとDatabase.comに加えて、2011年上半期にはJavaのPaaS「VMforce」も始まり、合計4種類に増える()。

図●「四本立て」になったセールスフォース・ドットコムのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)
図●「四本立て」になったセールスフォース・ドットコムのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)
アプリケーションの開発・実行基盤となるプラットフォームの種類を増やしている

 Herokuは2007年に始まったPaaSで、アプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails」が用意してある。HerokuやDatabase.comを加える狙いは、ソーシャルアプリケーションやモバイルアプリケーション分野の強化だ。

 セールスフォースの会長兼CEO(最高経営責任者)であるマーク・ベニオフ氏は最近ことあるごとに、「業務アプリケーションは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のFacebookのようになるべきだ」と訴えている。業務アプリケーションにソーシャル機能を組み込むことで、従業員同士の知識共有が活発になり、生産性が向上するという主張だ。クライアントとしては、iPhoneやiPadなどモバイル機器を重視している。

 同社のSaaS「Chatter」はソーシャル化の第一弾だ。従業員同士が「つぶやき」を通じて、営業情報をリアルタイムに共有できる。次なる取り組みとして、ソーシャルアプリケーション開発者から支持されているRubyのPaaSであるHerokuを買収した。

 モバイル分野の強化策が、データベースサービスのDatabase.comだ。Database.comは、Webサービス経由で利用できるクラウド上のデータベース。スマートフォン上のモバイルアプリケーションなどからも利用できる。従来のForce.comのデータベースは、Force.com以外のアプリケーションからは利用できなかった。

 セールスフォースが新たに狙いを定めたソーシャル領域のPaaSでは、開発言語「Python」が利用できるグーグルの「Google App Engine(GAE)」の採用事例が多い。セールスフォースは、GAEの領域に乗り込んだ格好だ。グーグルも2011年第1四半期に「GAE for Business」を開始し、セールスフォースが得意とする業務PaaSに乗り込む。PaaS市場を巡って、クラウド大手の「領域侵犯」が始まった。