2010年は、クラウドコンピューティングが台頭する一方で、その基盤となる仮想化技術がシステム開発・運用の実務に深く浸透しつつある年だったと言えよう。仮想化分野における2010年の年間アクセスランキングを見ても、実務情報を伝える解説記事がずらりと並んだ。

 最も関心を集めたテーマは、1位、2位、4位、14位の記事で取り上げている「VMware Player」だろうか。無償で利用できる個人向けの仮想化ソフトである。2010年に「VMware Player」が話題になったわけではないのだが、このソフトの解説記事は何年も読まれ続けている。

 同じく無償のVMware ServerやXenを取り上げた記事にも同じ傾向がある。個人の環境で無償の仮想化ソフトを試したり、システム開発環境に仮想化ソフトを組み込んで使ったりしている読者が多いのかもしれない。

 今年らしい記事としては、仮想化に伴う性能劣化について論じた「改めて問う、仮想化の性能問題」という特集が挙げられる(8位の「仮想CPUの割り当て方で変わる性能」、12位の「計算性能はもう十分すぎるほど」)。仮想化環境の性能検証データはいろいろあったが、最新の12コアプロセッサ搭載サーバーで性能を検証したところがこの記事のポイントだ。そこから得られた結論は、これまで常識と思っていたことを覆すものだった。

 デスクトップ仮想化(仮想デスクトップ)の記事がランクインしたのも“今年らしい”と言える。18位の「【事例】三菱東京UFJ銀行、3000台のPCを仮想デスクトップにリプレース」をはじめ、今年は数千台規模の導入事例が相次ぎ、ITproでも東京海上日動火災保険太陽生命保険明治大学国分などの事例を紹介してきた。

 背景には、ハードウエアと仮想化ソフトの進化により、1台のサーバーで運用できる仮想デスクトップ数が大幅に増え、コストパフォーマンスがぐっと高まってきたことがある。その辺の事情は19位の「格段に導入しやすくなったデスクトップ仮想化」で詳しく解説している。

仮想化ランキング
(2010年1月1日~12月11日)
1位 【仮想化を手軽に体験】フリーで使える仮想マシン・ソフト「VMware Player」
2位 【フリーの仮想化ソフトを使う】第1回 入門に最適なVMware Player
3位 【記者の眼】仮想化ソフトの意外な使い方
4位 【PCルネサンス】第1回 フリーで使える仮想マシン・ソフト「VMware Player」
5位 【VMware Infrastructure 3の全貌】第2回 P2Vによる仮想マシンの効率的な構成
6位 【ニュース】iPadでWindows 7アプリを利用可能に、Citrixが仮想化ソフトを強化
7位 【VMware Infrastructureインフラ構築実践Tips】第1回 利用前に知っておきたいESX Serverの基本構成
8位 【改めて問う、仮想化の性能問題】仮想CPUの割り当て方で変わる性能
9位 【VMware Infrastructureによる仮想環境構築法】第4回 VLANやチーミングにも対応する仮想ネットワーク
10位 【フリーの仮想化ソフトを使う】第2回 小規模システムに使えるVMware Server
11位 【VMware Infrastructureインフラ構築実践Tips】第4回 ESX ServerとゲストOSのバックアップを考える
12位 【改めて問う、仮想化の性能問題】計算性能は「もう十分すぎるほど」
13位 【仮想化を阻む壁】仮想化は本当に安いか
14位 【PCルネサンス】第5回 VMware Playerの仮想マシン環境をカスタマイズ~その2
15位 【仮想化の技術&製品トレンド】Linuxカーネル標準の仮想化機能KVM
16位 【完全理解!仮想化テクノロジ】「シン・プロビジョニング」というストレージの新常識
17位 【Xenによる仮想化システム構築術】第3回 Xenによる仮想環境のネットワーク構築
18位 【事例】三菱東京UFJ銀行、3000台のPCを仮想デスクトップにリプレース
19位 【デスクトップ仮想化の構築法】格段に導入しやすくなったデスクトップ仮想化
20位 【記者のつぶやき】仮想化技術が“コモディティ化”しない理由