Q 数カ月前,私のミスがもとでプロジェクトに大きな手戻りが発生しました。それ以来,「また同じような失敗をするのではないか」という不安が頭から離れず,仕事に全く集中できません。どうしたらいいでしょう。(男性,27歳,SE)

 「何かが気になる」「心配だ」「怖い」といった不安にとらわれ,ひどいときには仕事に適応できなくなる――。こうした心の病を「不安障害」と呼びます。数年前までは,「ノイローゼ」「神経症」と呼んでいました。

 不安障害と一言で言っても,いくつかのタイプがあります。

 その一つである「全般性不安障害」は,ストレスの強い出来事や体験をした結果,過剰な不安や心配(専門用語では「予期憂慮」と呼びます)に襲われる病気です。

表1●全般性不安障害のチェックリスト
表1●全般性不安障害のチェックリスト

 質問者は,この全般性不安障害の疑いがあります。表1のチェックリストで確認してみてください。思い当たる項目が三つ以上あれば,全般性不安障害にかかっている可能性が高いと言えます。

 全般性不安障害になってしまうと,自分ではどうすることもできないうえに,少なくとも6カ月間は症状が続きます。症状を緩和して病気を克服するには,プロの心理カウンセラーを訪ねてください。症状がひどかったり,睡眠障害があるようなら,精神科の受診も必要になります。

 このほか,突然,動悸や震え,窒息感に襲われる「パニック発作」や無意味だと知りつつも特定の考えや動作を衝動的に続けてしまう「強迫性障害」,それに「心臓の調子が悪いのではないか」「膀胱に腫瘍ができているのではないか」などと,体のことを異常に心配するケースも不安障害の一種です。

 また,激しいストレスに見舞われたり,生死にかかわるような出来事を体験した結果,強い不安や恐怖,戦慄,無力感などに襲われる「ストレス性障害」も,不安障害のタイプの一つです。急性の場合は4週間以内に症状はおさまりますが,1カ月以上持続するときもあります。このように慢性化したストレス性障害を,特に「PTSD(心的外傷後のストレス障害)」と呼びます。

 社会的状況や人間関係に極度の恐れを感じる「広場恐怖」あるいは「社会恐怖」も,不安障害の一種です。前者は,家の外に1人でいることを恐れる,バスや電車,自動車で移動しているときに,極度の不安に襲われる,といった症状が表れます。後者は人前に出ることを嫌悪し,恥ずかしい思いをすることを極力回避する行動をとります。

 このように,不安障害には様々なタイプや症状があります。もし,思い当たることがあったら,できるだけ早期にカウンセラーや精神科を訪ねてください。自己流でなんとかしようと我慢していると,かえって症状を悪化させる危険性があります。

 実は,不安障害には「かかりやすい性格」があるのです。「小さいころから周りの期待に応えようと気を遣っていた」「常に脅されながら育った」「誰かと極端に比較されて育った」という人は要注意です。こうした人は,どうしても精神的にナーバスになる傾向があるからです。

武藤清栄
東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。関東心理相談員会会長。日本精神保健社会学会副会長。著書に「雑談力」,「号泣力」(いずれも明日香出版社),「本音力」(ロゼッタストーン)など