前編に続いて、『GQ JAPAN』2011年1月号に掲載された「The Web Is Dead (ウェブよさらば!?)」の日本語全訳のうち、ジャーナリスト(WIRED誌の協力編集者)のマイケル・ウォルフ氏が執筆したパートの抜粋をお届けする。

 ウォルフ氏はまず、情報の検索を拒否することで米グーグルに真っ向から戦いを挑んでいる米フェイスブックを引き合いに、ネット企業の囲い込み戦略を生々しく紹介。さらに米アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)が果たした役割を分析することで、「テクノロジーとメディアの融合」という別の視点からも、今起こりつつある従来型のWebの終焉に切り込む(ITpro)。


 ウェブは常に2つの顔を持っている。インターネットは既存のビジネスや権力構造を破壊することを意味してきた。だが同時に、そこには絶えざる勢力争いがあり、多くの企業が、TCP/IPに支えられた宇宙のすべてか、かなりの部分を支配しようと、資金を用意して、自分たちの戦略を実行している。Netscapeはホームページの世界を牛耳ろうとしたし、アマゾンは小売業を、ヤフーはウェブのナビゲーションを支配しようとした。

BLAME THEM

 このプロセスの終点にグーグルがいる。グーグルはオープンなシステムと公平なアーキテクチャの象徴と言えるが、皮肉にも、見事な戦略を持って、そのオープン性をほぼ完全にコントロールしているのだ。

 これほど見事に産業全体が1人のプレーヤーに従属することは、ほかでは想像できない。グーグルのモデルを映画産業に当てはめれば、映画を配給するのは1社だけで、さらにそこはすべての映画館も所有していることになる。

 グーグルはトラフィックとセールス(広告)の両方を管理することで、既存のウェブでは誰もグーグルより大きくなれないのはおろか、張り合うことさえ難しい条件を作りあげた。世界で最も効果的な分散システムを持つ最高権力者であり、まるで古代ローマ帝国のようだ。

 ウェブに関するある分析によると、アメリカのオンライン業界団体IABのランダル・ローゼンバーグ会長は、ウェブは「世界を支配したいと望む誇大妄想狂の集まり」だと評したという。ビジネスの目標として、グーグルの偉業を再現することを夢見る「誇大妄想狂」が出てくるのは必然なのだろう。

 そして、グーグルがウェブを支配しているために、その夢はウェブに代わるものを築くことを意味するのだ。