インターネットの世界で今、大きな変革が起こりつつある。ブラウザを使ったWebサイトへのアクセスから、単機能だが便利なアプリを使ったサービスの利用へ。汎用的なパソコンから、iPhoneやAndroid端末などのスマートフォンへ。ユーザーを囲い込むことで利益を得ようとする「ネットの巨人」同士がしのぎ合う中で、そんなプラットフォームシフトが世界規模で進行しているのだ。

 この大変革の波をいち早くとらえ、“The Web Is Dead. Long Live the Internet”と題するコラムとして発表したのが、米WIRED誌の人気編集長クリス・アンダーソン氏とジャーナリスト(同誌の協力編集者)のマイケル・ウォルフ氏である。2010年8月に発表するや世界中の人々に衝撃を与え、一大センセーションを巻き起こした。ここでは、『GQ JAPAN』2011年1月号に掲載された「The Web Is Dead (ウェブよさらば!?)」の日本語全訳のうち、アンダーソン氏が執筆したパートから、特に日本のユーザーにとってポイントとなりそうな部分を抜粋して紹介する(ITpro)。


 朝起きて、あなたはベッドサイドのiPadで電子メールをチェックする。それで1アプリ利用だ。朝食をとりながら、フェイスブックやツイッター、「ニューヨーク・タイムズ」のデジタル版を見る。3アプリ追加。

 通勤途中でスマートフォンのポッドキャストを聴いて、1アプリ。仕事中はRSSを使い、SkypeやIM(インスタント・メッセンジャー)で話をし、さらにアプリを利用する。帰宅してから、夕食を作りながらPandraを聴き、食後はXbox Liveでゲームをし、Netflixの動画配信サービスで映画を見る。

BLAME US

 このようにあなたは一日中インターネットを使っているが、ウェブは利用していない。そうしているのはあなただけではない。

 ここではインターネットとウェブの違いを語ろうというのではない。この数年間にデジタル世界に起きている大きな変化の一つは、ワイドオープンなウェブから、セミクローズドなプラットフォームへシフトが起きていることだ。

 後者ではインターネットを使うが、それはアップスを運ぶ手段としてであって、ディスプレイ用のブラウザとしてではない。そのシフトは第1に、モバイルコンピューティングのiPhoneモデルが開発されたために起きたが、その世界ではグーグルは動き回れないし、HTMLの支配は及ばない。

 また、消費者がそれを選ぶようになった理由は、ウェブの理念を拒絶したからではなく、単純に、そちらのほうが機能的で、生活にフィットしているからだ(ユーザーはスクリーンのある場所に行く必要はなく、スクリーンがやってきてくれる)。企業にとっても、お金を儲けるためには、このトレンドを強固にするだけでよいから楽なのだ。

 ウェブがデジタル革命の頂点でないことは、製造者も消費者も同意するところとなってきた。

(中略)