by Gartner
レズリー・フェーリング リサーチVP
ケン・デュラニー VP兼最上級アナリスト
針生 恵理 シニアアナリスト

 米アップルのiPadは、ノートPCの代わりにはならない。しかし、営業担当者による顧客へのプレゼンテーションなど複数の業務領域では、力を発揮する。

 ガートナーによるCIO(最高情報責任者)ミニ調査によれば、CIOの85%が、iPadやiPhoneを現場から求められており、75%の企業でエンドユーザーが許可を得ずにiPadやiPhoneを企業内ネットワークに接続し始めているという。ただし従業員によるiPadやiPhoneの利用をサポートしている企業は全体の15%にとどまった。

 iPadは、メールや予定表をさっと見たり、Webアプリケーションや各種の情報ソースを閲覧したり、商談相手に「PowerPoint」のプレゼンテーションを見せたりするのに向いている。その一方でiPadには、大きな表を編集するようなパワーや、長文入力に向いたキーボード、PC用オフィスソフトとの高い互換性などが欠けており、ノートPCをiPadに置き換えるのは困難だ。

 既にデスクトップ仮想化環境を導入している企業であれば、「Citrix Receiver for iPad」のようなシン・クライアント・アプリケーションを使用することで、iPadからWindowsアプリケーションやデスクトップ環境を利用することも可能になる。

 iPadが活用可能な業務としては、以下のものが挙げられる。

■屋外業務
 マルチタッチ機能を備えたiPadは、地図の閲覧には理想的なプラットフォームだ。地図のズームイン/アウトが容易で、路線図なども重ね合わせて表示できる。マニュアル類などをiPadに格納することで、サービス担当者が現場ですぐに作業を始められるようになる。もっともiPadには、直射日光下で視認性が落ちる、手袋をはめた指をタッチパネルが感知しない、内蔵カメラが無い、といった欠点もある。

■医療
 医師が患者の情報や各種の診断画像、必要な医学文献などを素早く閲覧するデバイスとして活用できる。

■薬局
 患者に薬の説明を行う際の資料表示用のデバイスとして、待合室で情報を表示するディスプレーとして活用できる。ただし、現在普及している「薬の説明用アプリケーション」の多くは、画像の表示に「Flash」が必要である。iPadで使うには、プログラムの書き換えが必要だ。

■教育
 「この絵を見て答えてください」といった授業を行う際のディスプレーとして、生徒に対して簡単なテストを実施する際のデバイスとして活用できる。

■消費者向けサービス
 旅行代理店で顧客に見せる「インタラクティブなパンフレット」として、飛行機やクルーズ船の中で貸し出す「ビデオプレーヤー」として活用できる。

 企業は今後、アプリケーションを開発する際に、iPadのようなモバイルデバイスへの対応も検討する必要がある。将来的には「HTML5」のような標準技術を採用し、クロスプラットフォームで動作するWebアプリケーションを検討するのが望ましい。