「スマートフォンは始まりに過ぎない。あらゆる機器がスマートデバイスに置き換わっていく。その選択肢は今のところAndroidしかない」(GClue 代表取締役社長 佐々木陽氏)---。2010年12月1日、組み込み総合技術展「ET2010」で、Android特別セミナーが開催された。一般社団法人 OESF(Open Embedded Software Foundation)や日本Androidの会のメンバーが、組み込みシステムへAndroidがもたらす影響や、開発ノウハウなどについて講演した。

ET2010 Android特別セミナー
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「企画から3カ月で出荷」、開発期間が劇的に短縮

 午前中に行われたAndroid特別セミナーPart Iは、「Android による組込み市場革命」と題し、OESFのメンバーが講演した。

 「企画から3カ月で商品を出荷する、といったことまで起きている」とOESF 代表理事 三浦雅孝氏は言う。AndroidによってOSやユーザーインタフェースなどがパッケージ化され、ハードウエアの設計や製造は台湾や中国のODM(Original Design Manufacturing)ベンダーを活用することで、劇的な開発期間の短縮が現実のものとなっている。

OESF 三浦雅孝氏
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 また低価格化も急激だ。「インドでは35ドルのAndroid端末も出現している」(三浦氏)。

 この現実にどう立ち向かうべきか。OESFが開発しているのが、スマートフォン以外の組み込みシステム向けのAndroidベースのディストリビューション「Embedded Master」である。最新版の「Embedded Master 3」は、Android 2.2ベース。「Embedded Master 3」Linuxカーネル部分にはLinaroを採用する。Linaroは英ARM、米IBM、韓国Samsung ElectronicsなどがOSSとして開発しているモバイル向けLinuxである。

 2010年12月にOESFのワーキンググループ内でリリースし、2011年3月には一般にもオープンソースソフトウエア(OSS)として公開する。「AndroidはOSSだから成功した。Embedded MasterもOSSとして会員企業が協力して開発する」(三浦氏)。

 Embedded Master向けの統合開発環境「OESF Platform Builder」もリリース。またアプリケーションマーケット構築フレームワーク「Market Place SDK」も開発している。「Android Marketのようなマーケットを簡単に作ることができる」(OESF 理事・チーフプロジェクトコーディネータ 今村謙之氏)。

 ソフトウエアはOSS。ハードウエアは台湾や中国。差別化や付加価値をもたらすのはデバイスと組み合わせたクラウドサービスだ。「斬新な発想とグローバルな視点が必須だ」(三浦氏)。

 台湾や中国など海外の企業との連携も不可欠だ。「日本企業の強みはミドルウエアやアプリケーションにあり、それをソリューションとして海外企業と組むべき」(OESF インターナショナルオペレーションズ・エグゼクティブディレクター 関根達記氏)。セミナーには台北市コンピュータ協会のSakura Yang氏や、スーダンの国立研究機関 Nile Center technology for ResearchのElwaleed Bashir氏も登壇し、ともに日本企業と協力していきたいと語った。

 そして人材育成。OESFは技術者のトレーニングを行っているほか、「Android技術者認定試験制度」を2010年11月29日に開始した。「Android技術者が学ばなければいけない内容を試験範囲とした」(OESF エデュケーションワーキンググループ コーディネーター 満岡秀一氏)。