“情報爆発”の時代を迎え、企業の情報活用戦略は、企業経営に影響を与えるであろう“兆し”、すなわち「パターン」を積極的に見つけ出し、来るべき変化に備える「PBS(パターン・ベース・ストラテジー)」にある。今回は、組織および個人の能力にビジネス上のメリットを獲得するための方法として注目されている、コンテキスト(文脈)情報の活用について解説する。

重要性が高まるコンテキスト

 人脈情報や、位置情報、プレゼンス(在席状況など)、社会的属性といったコンテキスト(文脈)に着目することで、企業や個人の能力を改善しようという取り組みを、コンテキスト・アウェア・コンピューティングと呼ぶ。見込み客をより適切に特定したり顧客ニーズを的確に把握したり、あるいは社員の生産性を改善したり社員間のコラボレーションを強化したりが期待できる。

 コンテキスト情報は、以下の四つに大別できる。

●プロセス=システムとユーザー定義のルール
●環境=ロケーション、ネットワーク対応能力
●コミュニティ=グループ、リンク、タグ付け、プレゼンス
●ユーザー情報=信用度、役割、タスク、評判

 一般に、コンテキスト情報は多数の情報源から集約しなければならない。膨大な量になる可能性があり、予測が非常に困難である。そのために何らかの問題を伴うことがある。

人脈を拡大するソーシャルネットワーク

 ところで前回、ソーシャルネットワークを分析することによる企業のメリットを紹介した。具体的には、ビジネス上の人脈についての重要なビジネスインテリジェンス (BI) を獲得できることだった。

 ネット上には大量の情報が存在する。現実世界でも、だれもが大量の知覚情報をシャワーのように絶えず浴びているが、その大半を選別するか無視する能力がなければ、人間はそもそも活動すらできない。生成される情報が急増することで問題が発生することは、1970年にアルビン・トフラー氏が「情報オーバーロード」という造語を使って予測している。

 大量の情報を前に、ソーシャルネットワークを使って対処するという考え方は、目新しくはない。大昔から意思決定者は、無数の問題について自分が信頼する人々の助言を頼りにしてきた。

 例えば、「ロンドンに行く場合、便利な空港はヒースローかガトウィックか」という事実に基づいた単純な問題であれ、「X社を買収した場合、自社のビジネスモデルはどのような影響を受けるか」といった微細な差異を慎重に検討しなければならない問題であれ、他者が意思決定のための選択肢の絞り込みを支援できるのだ。

コミュニケーションの“場”を創出するSNS

 数年前から、「Facebook」や「LinkedIn」といったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトが登場している。これらのサイトは、情報共有やSMS(ショート・メッセージ・サービス)、チャットなど、これまでばらばらだったコミュニケーションの流れを統合し、管理性を高めた“場”を創出しようとしている。

 SNSサイトでは、利用者がプロフィールを作成・維持し、そのプロフィールを通して他者と情報共有を図っている。他の利用者は、様々な手段でそのプロフィールを持つ利用者と交流できる。親友同士で非公開のサークルを運用したり、共通の関心を持つ見知らぬ人々のグループに参加したりである。

 ソーシャルなネットワークの形は多岐にわたる。オープンなSNSサイトに見られるような緩やかなつながりもあれば、旧来の組織が持つ階層構造のような緊密な所属関係までもある。それは、図 1に示すように、創発性または計画性の程度 (横軸) と、目的指向または関心指向の強さ (縦軸) によって様々に異なっている。

図1●ソーシャルネットワークの分類
図1●ソーシャルネットワークの分類
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