NTT西日本の回線に接続してADSLなどのサービスを提供している接続事業者ら15社は2010年11月16日、総務省に「公正な競争環境の実現に向けた対応に関する要望書」を提出した。これは、NTT西日本が他事業者の利用者情報を不適切に使用したと2009年11月に発表した件について、事件発覚から1年近くが経過したにもかかわらず、NTT西日本から接続事業者らに対して明確な説明がない状況の解決を目的としたものである。

13回文書送付、3回の合同説明会開催も…

 接続事業者らは要望書提出後に会見を行い、経緯の説明や記者の質問に答えた。会見で接続事業者らは事件発覚以降、合同で状況説明を求める文書を13回、NTT西日本に送付したと説明した。NTT西日本はいずれについても文書で回答し、また関係する接続事業者らを集めた合同説明会も2010年4月、8月、10月に計3回開催した。しかしいずれにおいても、「今回不正利用されたデータは何のために作成されたのか」「なぜ不正利用されたデータを事件発覚直後に廃棄したのか」「廃棄したとされる不正利用データが、6月に一転して存在することが明らかになった経緯」──などの接続事業者らの疑問に対して、明確な回答が得られていないという。

 こうした状況を受けて、接続事業者らは総務省に要望書を提出することとなった。要望書では主に(1)「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の議論を通して、ボトルネック設備に起因する問題や総合的な市場支配力によるグループドミナンスの問題に対処するための実効的な政策を導入することと、(2)顧客情報の不正利用について客観的な検証ができるように、NTT西日本に対する追加的な行政指導を実施──の2点を求めている。

政策要望の中身は各社各様

 なお、問題に対処するための具体的な政策の内容については、今回の要望書には盛り込んでいない。この点について接続事業者らは「事業者ごとに求める内容が異なるため」(KDDI 渉外・マーケティング統括本部 渉外部長の古賀靖広氏)と説明した。個々の事業者として求める政策について質問が及ぶと、「グループドミナンスの排除」(KDDI)、「禁止行為の拡大など、今できることを確実に実施」(イー・アクセス)、「(アクセス部門の)構造分離や資本分離まで踏み込んだ対策」(ソフトバンクグループ)、「NTT西日本本体ではなく、その子会社への規制によるドミナント規制」(ケイ・オプティコム)と答えた。

 今回要望書を提出したのは、イー・アクセス、関西ブロードバンド、ケイ・オプティコム、KDDI、彩ネット、ZIP Telecom、ジャパンケーブルネット、ジュピターテレコム、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、長野県協同電算、新潟通信サービス、フュージョン・コミュニケーションズ、マイメディア、ミクスネットワークの15社である。