1. 業務システムの基盤刷新に際し、仮想化技術を活用したクラウドサービスへ移行 2. 高い可用性を目指し、厳格な受け入れテストで冗長化機能に関する不備を撲滅した 3. 1Tバイトのデータを確実に移行するため、4回のリハーサルで手順を決定している |
「冗長化機能が確実に動作することを、ディスクを実際に抜き取るなど500項目近くの受け入れテストで検証した。3人が毎日8~9時間かけて約1カ月間かかったが、その成果は大きかった」(大和ハウス工業 情報システム部 情報技術グループ 上席主任の櫻井直樹氏)。
大和ハウス工業は、同社社員および派遣社員合わせて約2万人が利用する業務推進システムを2010年1月にプライベートクラウド環境へ移行した。50台の物理サーバー上で動作していたシステムを、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が構築したPaaS(Platform as a Service)上で稼働させ、月額制料金のサービスとして提供を受けている(図1)。
このクラウドサービスに求めた可用性は99.999%と非常に高い。1年間で約5分のダウンタイムしか許されないレベルである。
課題は大きく二つあった。第一は、この高い可用性を実現するクラウド基盤の冗長化機能に対する検証だ。同基盤ではサーバーやネットワークなどを多重化しているが、障害があったとき、本当にサービスは継続するのか。大和ハウス工業は徹底した受け入れテストでこの課題に対処した。
もう一つは、従来の自社構築システムからのデータ移行である。移行データ量は約1Tバイトあった。これを年末の計画停止の際、確実にクラウド基盤上へ移す必要がある。データベース管理システム(DBMS)のバージョンを上げることもあって、大和ハウス工業とCTCは、4回に及ぶリハーサルで移行手順を固めた。
以下では、こうした問題解決を現場がどう進めたのか、見ていこう。