住友林業は法制度への柔軟な対応が困難だった前システムを見限り、会計制度の変更に強い会計システムを新たに構築した。 IFRS(国際会計基準)強制適用への対応方針も確認しつつプロジェクトを進めた。

 そもそも前システムの狙いは決算早期化であり、カスタマイズしてもこの目的は達成できていた。会計システムは制度会計だけでなく、債権債務管理や固定資産管理、経費精算業務を支援しており、事業部門の要望を反映せざるを得なかった事情もある。その結果、制度変更にバージョンアップで対応できるのがERPの大きなメリットなのに、享受できない状況に陥っていた。

 2007年の固定資産関連の制度改正は、住友林業が手作業で帳票を作成するといった方法で対応した。しかし、「毎年、同様の対応を続けるのは限界がある。今後を考えると、システムを刷新したほうがよいと判断した」(三浦マネージャー)。

帳票や画面の追加は原則禁止

 前システムの反省を踏まえ、住友林業は「法規制の変化への対応のしやすさ」を念頭に置いて、新会計システムを構築した。

 ERPを選定する際は、「RFP(提案依頼書)の段階で、パッケージが現在および今後、法規制にどう対応していくかの方針を確認した」と情報システム部企画グループの斉藤佳男チームマネージャーは説明する。ここでERPを2製品に絞り、使い勝手を考慮してSuperStreamを採用した。

 プロジェクトの最中に、IFRSそのものを日本の会計基準として採用する強制適用(アダプション)の可能性も浮上。住友林業はIFRS強制適用への対応方針も、SSJに確認しつつプロジェクトを進めた。

 構築時には、カスタマイズを抑える方針を貫いた。ERPを常にバ ージョンアップできる状態を保つためだ。住友林業固有の帳票や画面の追加を原則、禁止した。

 新システムにより、IFRSだけでなく四半期開示など会計制度の変更に、手間をかけずに対応できる体制が整ったと住友林業はみている。

主要な差異を埋める「コンバージェンス」

 コンバージェンス(収れん)は、日本の会計基準(日本基準)とIFRSとの差異を埋めるための取り組みだ。コンバージェンスにより、IFRSと日本基準が同等の会計基準であることが保証される。

表●主なIFRSへのコンバージェンス(収れん)項目
表●主なIFRSへのコンバージェンス(収れん)項目
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 IFRSを設定しているIASB(国際会計基準審議会)と、日本の会計基準を設定するASBJ(企業会計基準委員会)が、2007年8月にコンバージェンスについて合意。日本基準とIFRSで差異の大きな項目を挙げ、11年6月までに主要な差異を埋めるとした()。

 一方でIFRSは毎年、大きな改定や追加が続いている。11年6月以降も、IFRSに改訂や追加があった際には、日本は同等性を維持するために、日本基準の変更を続けていくことになる。IFRSの影響による会計制度の変更は今後も毎年、発生する見通しだ。