これまで“野放し”にしていたグループ子会社の会計システムをどのように刷新するか---。IFRS(国際会計基準)対応で情報システム部門が直面する大きな課題の一つだ。こうした課題の解決策としてクラウドの活用を提案するサービスが登場した。

 「IFRS(国際会計基準)対応の早期化を支援する」。NTTデータビズインテグラル(NTTデータビズ)の中山義人社長は9月4日に発表した新サービス「連結クラウド」の目的をこう説明する。

 連結クラウドは、グループの子会社各社の個別会計処理やグループ全体の連結会計処理に必要なアプリケーションをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供する。NTTデータのクラウド基盤サービス「BizXaaS(ビズエクサース)」を利用している。

図●IFRS対応を支援するSaaSの概要
図●IFRS対応を支援するSaaSの概要
NTTデータビズインテグラルの「連結クラウド」の例
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 提供するアプリケーションは3種類ある。(1)NTTデータビズのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「Biz∫会計」、(2)グループ全体の会計データを収集し、勘定科目を統一したりIFRSに基づく会計データに変換したりするグループ統合元帳ソフト「Biz∫G元帳」、(3)連結会計処理を実行する連結会計ソフト「Biz∫連結」だ()。

 Biz∫G元帳とBiz∫連結は、連結会計ソフト専業のディーバ製品のOEMである。

短期導入可能なSaaSが向く

 連結クラウドはグループ企業に閉じたプライベートクラウドとしての利用を想定している。グループ子会社は連結クラウド上の個別の会計システムを、親会社は連結決算処理に必要な連結会計ソフトを利用する。

 提供開始は2011年第1四半期で、15年までに「3000社への導入を目指す」(NTTデータビズの田中秀明 取締役営業本部長)と強気だ。IFRSの適用対象となる上場企業100社に販売すれば、1社当たり平均30社の子会社が導入するとみている。

 連結クラウドを利用する最大のメリットは、導入期間を短縮できることだ。

 導入期間の短縮が必要なのは、IFRS対応の際に連結子会社の会計システムを見直す手間が大きな課題として浮上しそうだからである。IFRSの強制適用(アダプション)が決まると、IFRSに基づいた連結財務諸表の作成が義務付けられる。このため、グループ全体での対応が必要になる。

 ところが子会社のなかには、自社開発の会計システムや、IFRSに基づいた会計数値を計算できないシステムを利用している企業がある。「グループ全体を考えると準備期間は非常に短い」(NTTデータビズの田中営業本部長)。

 IFRSを強制適用するかどうかを、金融庁が正式に決定するのは12年である。もっとも早い場合、15年3月期から強制適用になるため、15年3月期を目指して準備を進める必要がある。