*本記事は,日経エレクトロニクス2010年10月4日号に掲載した内容の再録です。記事は,執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります。

 シャープは,2010年12月に電子書籍配信サービスを始める注1)。同時期に発売する専用のタブレット端末2機種に向けて,自社で運営するストアからコンテンツを配信する。

注1)2010年12月10日にサービスを始めることを,同年11月29日に発表した(関連記事)

左が5.5型品,右が10.8型品。いずれも無線LAN通信機能を搭載する。今回の端末は3G通信機能を備えないが,今後,対応機種の発売も検討するという。
左が5.5型品,右が10.8型品。いずれも無線LAN通信機能を搭載する。今回の端末は3G通信機能を備えないが,今後,対応機種の発売も検討するという。
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 実は,この配信サービスはシャープが手掛けようとしている大規模な事業計画の第1弾にすぎない。同社は今回発売する端末を活用して,2011年春以降,映像や音楽,ゲーム,教科書など多様なメディアの配信に乗りだす方針である。米Apple Inc.が先行する,消費者向けのネットワーク・サービス事業への参入を目指そうとしているのだ。「2011年の早い段階で,100万(人のユーザーとの)契約を目指す」(シャープ)と意気込む。

 シャープはこれまで,液晶パネルという自社製のコア部品を中核に,テレビやノート・パソコン,電子辞書,PDA,携帯電話機など,さまざまな端末を市場に投入してきた。しかし,最近では海外メーカーでも容易に類似の端末を開発できるようになっている。こうした中,従来の“端末売り切り”モデルからの脱却を図ろうという狙いが透けて見える。

 今回のメディア配信事業では,シャープが独自開発した配信システムを利用する。コンテンツ販売の手数料を,同社がコンテンツ・ホルダーから徴収するビジネスモデルを採る。「(手数料の)料率は相場並み」(シャープ)とする。今後は,国内にとどまらず,欧米を中心に海外展開も図る考えだ。

5.5型品は片手操作を念頭に

開始するメディア配信事業の名称は「GALAPAGOS(ガラパゴス)」。端末購入後も,利用できるサービスが“進化”し続けることを表現した。
開始するメディア配信事業の名称は「GALAPAGOS(ガラパゴス)」。端末購入後も,利用できるサービスが“進化”し続けることを表現した。
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 電子書籍配信サービスの開始当初は,新聞や雑誌,書籍など約3万コンテンツに対応する注2)。日本経済新聞や朝日新聞,各種雑誌などの対応が予定されている。自動定期配信サービスを備え,定期購読を申し込んだ新聞などは自動的に端末に配信される。

注2)2010年11月29日に発表した内容によれば,当初は約2万冊のコンテンツを用意する。

 当初は,シャープが開発したファイル・フォーマット「次世代XMDF」のみに対応する。ただし今後は,PDFやHTML,EPUBなど他のフォーマットへの対応も図っていくとする。

 シャープは,同社の強みとしてさまざまな端末を有していることを生かしていく考えだ。例えば,液晶テレビ「AQUOS」で試読したコンテンツを専用端末にダウンロードして読むといったように,端末間のメディア連携の仕組みを今後整えていくとする。

 今回発売するタブレット端末は,5.5型品と10.8型品。重さや価格などの詳細は,現時点では明らかにしていない注3)。5.5型品は「通勤電車内で,片手で操作することを考慮した最大限の画面寸法」(シャープ)としており,国内の利用事情に即した機種と位置付ける。端末下部の中央に配置したトラック・ボールを親指で操作する設計である。OSは,Android 2.1を採用する。

注3)2010年11月29日に重さや価格などの詳細が明らかになった。5.5型品の重さは約220gで価格は3万9800円。10.8型品の重さは約765gで価格は5万4800円。