「昨年と比較すると年収は1割下がり、やりがいも減った」─。IT人材のスキルや労働実態を調査・研究している特定非営利活動法人「ITスキル研究フォーラム(iSRF:アイサーフ)」がITエンジニア約3万3000人を対象に実施した調査から、この1年のITエンジニアの動きが見えてきた。

 iSRFは2009年9月から10年8月にかけてIT企業を中心に企業単位でスキル調査を実施した。これに加えて、10年6月から8月まで、WebによるITスキル診断システム「ITSS-DS」を使ってスキル診断と意識調査を行った。最終的に3万3004人の有効回答を得た。ここではこの調査結果を用いて、ITエンジニアの給与ややりがい、ITスキルを分析した。今回で9回目となる調査の方法の詳細は87ページに掲載した。

年収は40万円ダウン

 今回の調査では年収とやりがいがそれぞれ下がったことが分かった(図1)。

図1●平均年収とやりがいの推移
図1●平均年収とやりがいの推移
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 平均年収を見ると、昨年は552万円だったが、今年は40万円ダウンの512万円となった。最も変化が大きかったのは、年収が最も低いゾーンである「350万円未満」の回答である。昨年の16.4%から7.1ポイント増の23.5%となった。年収を500万円以上得ていると回答した人の割合は昨年が53.4%と半数を超えていたが、今年は44.8%にまで減った。

図2●ここ1年の収入の変化
図2●ここ1年の収入の変化
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 実際にここ1年の年収の変化を尋ねたところ、「下がった(3割以上)」「下がった(1~3割程度)」という回答者の合計は30.5%で、およそ3人に1人の年収が下がったことになる(図2)。逆に「上がった(3割以上)」「上がった(1~3割程度)」という回答者は13.4%だった。

 下がったのは年収だけではない。やりがいを感じている人も半数を割り込んだ(図1下)。仕事に対して「大いにやりがいがある」「やりがいがある」と回答した人の合計は、昨年が51.0%だった。だが今年は4.5ポイント減の46.5%と後退した。やりがいを感じていない人(「全く感じない」「あまりやりがいを感じない」の合計)は15.2%。昨年の13.9%から1.3ポイントとわずかだが増えた。

図3●将来のキャリアをどう考えているか
図3●将来のキャリアをどう考えているか
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 こうした“逆風”にITエンジニアは流されていくだけなのだろうか。そこで「将来のキャリアをどう考えているか」を尋ねたところ、6割以上が独立や転職によるキャリアアップや、今の社内でのステップアップを考えていることが分かった(図3)。

 今の会社から飛び出すことを視野に入れている人は35.6%である。「今の仕事で築いたノウハウや人脈を生かして、独立開業したい」とする人の割合が4.5%で、「今の仕事でステップアップしていきたい。別の会社に移ることも視野に入れている」と考える人の割合が31.1%だった。また回答者の30.0%は「今の会社のなかで、IT/組み込みソフトのエンジニア(今の仕事)としてステップアップしていきたい」と回答した。