様々な場面で情報活用への期待が高まっている。この状況を下支えしているのがストレージだ。ストレージの進化なしに、現在の、そしてこれからのIT環境は存在し得ない。“情報爆発”に耐えられるストレージ環境のあり方を探る中で、前回はストレージ統合のメリットを紹介した。そこで今回は、ストレージ統合を含め、環境を見直す際に必ず直面するデータ移行の問題について考えてみよう。

 前回、既存のストレージ環境について、「性能と容量の双方で過剰投資に陥っているケースが多い」ことを指摘した。その原因は、ストレージが分散し、システムごとに性能と容量の面でリスクヘッジをしているからだった。そして、そこから脱却する唯一の方法は、早期にストレージ統合を実施することであるとした。ここまでの提案に、異論を唱える人はいないだろう。

ストレージ事業は、増設と囲い込みのビジネス

 ところが、ストレージ統合の動きが実際に目立っているかと言えばそうではない。なぜなら、ストレージ統合時に発生するデータ移行が、足かせになっているためだ。これは、多くの利用企業やIT技術者が認めている現実だ。

 誤解や反論を恐れずに率直に述べるならば、「ストレージ事業は、増設と囲い込みのビジネス」である。一旦、それなりの規模でストレージを購入しシステムを構築・稼働し始めると、データ移行なしにストレージをリプレイスすることはできない。

 データ移行が難しいとなれば、そのストレージにディスクを追加して使い続けることが、残された手段になる。ストレージを販売する側としては、ディスクの増設と保守料により長期の安定したビジネスを期待できるのである。「ストレージは増設のビジネス」と呼ばれる所以である。

 それでも、ストレージのリース期間が切れたり製品がEOL(サポート終了)を迎えたりすれば、やむなくリプレイスするしかない。だが、その場合も、既存のストレージと同一のメーカーのストレージ製品へのリプレイスが、データ移行が最もスムーズに進むようになっている。

 つまり、相応の容量を抱えてしまえば、ストレージのメーカーを切り替えることは、決して不可能ではないが相当に難しくなってくる。これが「ストレージは囲い込みのビジネス」だと、筆者が言い切る理由である。

 だが、本当にそうなのだろうか。データ移行について十分に理解できているだろうか。十分な理解がなければ、「データ移行ができない、あるいは相当に難しいから、とりあえずディスクの増設で対処し、リプレイス時にはデータ移行が容易な同一メーカーの製品にリプレイスする」という、絵に描いたようなストレージベンダーのビジネスに巻き込まれることになってしまう。

 データ移行の解決策を考える前に、まずはデータ移行のどこが問題になるのかを考えてみよう。

 データ移行で真っ先に思い浮かぶのは、「どれぐらいの時間で終わるのか」という点である。少し計算すれば分かるはずだが、仮にデータのコピーが40Mバイト/秒の割合(これはかなり速いほうである)で実行できたとしても、1日24時間に移行できるデータ量は3TB程度である。

 逆に考えれば、3TB 以上のデータを持っていれば、普通にコピーなどしていたら週末にリプレイスすることは不可能ということである。