ほとんどの企業は、社内の受発注業務を支援するシステムを活用していることだろう。これに満足せず、取引先や顧客といった社外の担当者の受発注業務に目を向ければ、アシストできる領域が残っていることに気が付く。これが本業の強化につながる。

「仮データ」を社外に公開

 社内の担当者だけでなく、取引先の担当者の業務を支援するための有益なデータを公開する。これにより取引先との関係を強固にし、互いの事業を成長させる。

 こうした考えで、取引先の現場に喜ばれる情報を提供する仕組みを整えているのが、セブン-イレブン・ジャパンである。同社は、メーカーや卸業者などの取引先に対して、「仮発注データ」を公開し、取引先の現場の業務改善を支援している。たった一つのデータを参照することで、メーカーは生産計画、卸業者は調達計画、物流会社は配送計画をそれぞれ立案しやすくなる。

 「縮小する小売市場で成長し続けるには、我々だけでなく、取引先と共同で業務を効率化しなければならない」。セブン&アイ・ホールディングスの佐藤政行システム企画部CVSシステムシニアオフィサーは、仮発注データを公開している理由をこう話す。

 仮発注データは、発注を確定する1週間前から、セブン-イレブン店舗の発注担当者が仮に入力しておくデータのことだ()。仮とはいえ、取引先にとっては、セブン-イレブンからの将来の受注量を予測するための貴重な情報である。

図●セブン-イレブン・ジャパンの店舗発注システムの画面
図●セブン-イレブン・ジャパンの店舗発注システムの画面
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 取引先にとって、1週間という期間は、生産量や在庫量を調整するのに十分な時間だという。さらに仮発注データは、本発注データとの誤差が少なく、精度が高い。本番データに近い数値を1週間前に入手することで、取引先は機動力を高めている。

7割の取引先と共有

 セブン-イレブンは、仮発注データを2007年から有償で提供している。それでも、タバコや雑誌など流通経路が特殊な商品を除くと、売上高の7割近くを占める取引先が、仮発注データの開示を受けている。より多くの取引先が仮発注データを駆使して業務改善を進め、財務体質を強化すれば、それはセブン-イレブンにとってメリットがある。より強固な“セブンイ-レブン連合”を実現できるためだ。

 仮発注データを作って取引先に公開する。このためのシステムインフラは、2006年に構築した第6次総合情報システム。店舗の発注業務を支援するための多くの機能を備えていることでも有名だ。

 発注担当者は、発注端末から最新の商品情報や次の日の天気予報、近隣の催事情報、現在放映中のテレビコマーシャル、商品の陳列方法などを確認できる。こうした様々な情報を見ることで、発注量の最適化を進めている。