写真●ITpro EXPO 2010のブースでは、Lindacloud にHadoopを組み込んだアプライアンス「Lindacloud for Hadoop」やNASサーバーを搭載した「Lindacloud for NAS」などを出展した
写真●ITpro EXPO 2010のブースでは、Lindacloud にHadoopを組み込んだアプライアンス「Lindacloud for Hadoop」やNASサーバーを搭載した「Lindacloud for NAS」などを出展した
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 ITpro EXPO AWARD 2010の大賞に輝いたのは、NTTデータのクラウドコンピューティング専用のハードウエア「Lindacloud」だ。同社が自社で設計したサーバーきょう体と、一般的なデスクトップ用の部品を組み合わせることで、低いサーバー冷却コストと、低価格を実現した。

 同社は、Lindacloudに様々なソフトウエアを搭載して提供していく。ITpro EXPO 2010展示会では、Lindacloud にOSS(オープンソースソフトウエア)の分散処理ソフト「Apache Hadoop」を組み込んだアプライアンス「Lindacloud for Hadoop」()、シンクライアント接続用途のWindows Server搭載サーバー「Lindacloud for ThinClient」、NASサーバーを搭載した「Lindacloud for NAS」などを出展した(写真)。

図●「Lindacloud for Hadoop」のアーキテクチャ(資料提供:NTTデータ)
図●「Lindacloud for Hadoop」のアーキテクチャ(資料提供:NTTデータ)
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きょう体の工夫で冷却コストを低減

 Lindacloudは、高さ42Uまたは10Uのラック単位で販売する。42Uのモデルでは、1ラックに35台のIAサーバーを搭載。各サーバーの仕様は、CPUがIntel Core2 Quad 9550s、メモリー容量は8Gバイト、ハードディスク容量は1T~8Tバイトとなっている。

 特筆すべき特徴は、各サーバーの消費電力の低さだ。Lindacloudのサーバー1台当たりの消費電力は110Wで、一般的なラックマウントサーバーの半分以下である。同社 法人システム事業本部 テレコムビジネス事業部 第三統括部 第三テレコム開発担当の角野みさき部長は、「一般的なデータセンターの電力供給量の限界は1ラックあたり4kW/時。Lindacloudは、1ラックにサーバー35台のフル搭載の状態で、消費電力4kW/時以下にすることを目指して開発した」と説明する。

 低消費電力の理由は、冷却効率の高いきょう体にある。Lindacloudのサーバーは、きょう体に厚みを持たせることで、冷却ファンの配置の自由度を高めた。これにより、最も発熱量が多いCPUの近くにファンを取り付けることが可能になり、少ないコストでサーバー全体の冷却ができるようになったという。

 また、きょう体の材料に、樹脂よりも熱伝導率の高い鉄板を採用した。「鉄板のサーバーは大量生産には向かないが、樹脂と比較して強度があるため、きょう体内部を広く使える。また、熱伝導率が高いため排熱がしやすい」(角野氏)。さらに、Lindacloudでは、動作環境の温度を室温28度/内部温度45度と、一般的なデータセンターの環境(室温25度/内部温度40度)よりも高く設定した。これにより、サーバーの寿命が通常より短くなるものの、冷却コストが低減できる。

低価格の理由は「ハードではビジネスをしない」から

 Lindacloudの価格は、サーバー10台を搭載した10Uラックと予備サーバー1台をセットにしたNASサーバー「Lindacloud for NAS」で300万円から、40Uラックにサーバー32台をフル搭載してHadoopを組み込んだ「Lindacloud for Hadoop」は800万円から。部品にハイエンド製品を用いずに一般的なデスクトップ用のパーツを使う、HadoopのようなOSSを積極的に採用するなどの取り組みにより、価格を抑えた。

 低価格の理由には、他社のサーバー製品と比較して、原価率を高く設定していることもある。「当社はハードウエアでビジネスをしようと考えていない。Lindacloudはあくまで本業のSI(システムインテグレーション)のためのツールと位置付けている。そのため、Lindacloud自体は、材料費に手数料を加えた程度の価格で提供する」と角野氏は語る。

 汎用部品とオープンソースソフトウエアを組み合わせ、マージンを抑えて低価格で提供。そして付加価値はSIで生み出す---。Lindacloudは、まさにSierだから作ることができたハードウエアと言えるだろう。