“情報爆発”の時代を迎え、企業の情報活用戦略は、企業経営に影響を与えるであろう“兆し”、すなわち「パターン」を積極的に見つけ出し、来るべき変化に備える「PBS(パターン・ベース・ストラテジー)」(第1回参照)にある。今回は、商品レコメンデーションエンジンを取り上げる。一般に人手に頼るよりも効果的だし、売り上げを高めるための手段として効果を上げている。

実用期を迎えたレコメンデーションエンジン

 Webコンテンツを対象にしたレコメンデーション(推奨)エンジンに対する注目が高まっている。アルゴリズムによって商品を推奨しようという概念は10年以上前から存在してきた。それが今、ようやく大きな広がりを見せている。有意義で、かつ実用的な価値をもたらせるようになってきたからだ。大量の訪問者と売り上げを持つ、小売業のWebサイトで多用されている。

 多くのWebサイトの運営者は、米Amazon.comのWebサイトでは、商品がどのように推奨されているかを認識している。そして、自社のサイトにも、同様の機能を装備したいと考えている。利用者の動きが活発なオンラインチャネルを保有している小売業においては、特に注目が集まっている。

 レコメンデーションのための製品は、何年も前から存在していたが、使用方法が複雑だったこともあり、これまでは余り使われてこなかった。そのため一部の企業では、レコメンデーションの機能を独自開発したり、テーブルを手作業で維持したりしてきた。

 レコメンデーションエンジンの目的は、クロスセリング(関連商品の販売)率やアップセリング(より高額・より高付加価値な商品の販売)率、全体的な顧客転換率を向上させると同時に、ショッピングカートごとの購入価格や顧客ロイヤリティを高めることにある。そのためにレコメンデーションエンジンは、コンテキスト(文脈)に適合した商品の推奨情報を提示する。

“群衆の知恵”に基づき商品選択の傾向を分析

 レコメンデーションの基準になるのは、Webサイトの所有者による選択よりもむしろサイト訪問者の行動である。Webサイトを訪れる消費者の商品選択傾向の分析結果、すなわち“群衆の知恵”だ。もちろん、Webサイトの所有者が一定の方向付けを与えることもできる。

 レコメンデーション情報は、Webサイト上で公開されるほか、特定顧客向けの電子メールやディスプレイ広告に組み込まれたり、コールセンターのアプリケーションによって知らされたりする。

 例えば、ある消費者がズボンを購入しようとすると、商品の詳細ページには他の消費者が注目している、あるいは実際に購入した商品が、推奨品として表示される。コンテキストに応じたレコメンデーション情報の適合性が高ければ、買い物客が推奨品を検討する可能性は高くなる。

 レコメンデーションエンジンの用途は、商品の推奨だけではない。例えば、質問に対して最適な回答を提示したり、検索エンジンと連動したりコンテキストに基づいて適切なナビゲーションリンクを表示したりといった用途だ。ただ今回は、これらの用途については取り上げない。