グーグルのクラウドの原点。それがWeb検索だ。検索サービスを改善するために世界規模の巨大インフラを構築し、それが新たな検索機能を生み出す土台になった。では、今から5年後、グーグルはどんな世界を実現しようとしているのか。技術担当幹部のインタビューを基に、グーグルが描く検索の将来像をみていく。

表●最近の検索機能強化の動き
表●最近の検索機能強化の動き
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 米グーグルが、Web検索サービスの強化を急いでいる()。今年に入ってからだけでも、大小合わせて15回以上の強化を実施した。

 なかでも力を注いでいるのが、リアルタイム検索だ。「かつて、Web検索で得た情報の中身は、数日前のものであるのが当たり前だった。今では1分前に更新された情報ですら、検索できるようになった」(エンジニアリングと研究部門を担当するアラン・ユースタス上級副社長)。

 リアルタイム検索を可能にしたのが、昨年10月の米ツイッターとの提携である。ミニブログ「Twitter」の利用者が投稿したメッセージ(つぶやき)を検索できるようにした。Twitterのインデックスなどを直接検索することで、グーグルの検索システムがWebを巡回してインデックスを作成するよりも早く、Web上で更新された情報を検索できるようにした。この6月には、つぶやきに関連するニュース記事などを併せて表示する機能を追加した。

大衆の知恵で地図を充実

 リアルタイム検索を含めて、グ ーグルがここ数年かけて取り組んできたテーマは大きく四つある。個人ごとに最適な検索を可能にする「パーソナライズド検索」、現実世界の情報を取り込んだ「非ネット検索」、そして外国語の自動翻訳技術などを使った「言語の壁を超えた検索」である。

 パーソナル検索実現の方策の一つが、ソーシャルグラフの活用である。ソーシャルグラフとは、利用者のネット上における交友関係情報のこと。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)内の友人が書いた日記などを、一般的な検索結果に含めて表示する。

 「特定の商品に関して私の友人が書いたレビューは、他の人にとってはどうでもいいことかもしれないが、私にとっては非常に意味がある情報だ」。検索技術担当フェローのアミット・シングハル氏は、こう意義を述べる。

 非ネット検索の取り組みで有名なものは、実際の街路の写真を撮影して検索可能にする「Street View」、グーグルがスキャンした書籍の内容を検索する「Google Books」などがある。グーグルはカメラを搭載した自動車を世界中で走らせるなど、膨大な手間をかけて現実世界の情報をネットに取り込んできた。

 とはいえ、さすがに限界はある。特に問題が顕著なのがアジアだという。「アジアの都市は交通網が複雑で人口密度が高く、常に形状が変化している。例えばインドでは標識がなかったり道路に名前を付けなかったり、名前が付いていてもローカル言語であったりするといったことが多い。Webに情報を載せることは、非常に困難だ」(アジア太平洋地域で検索関連製品のプロダクト マネージメント ディレクターを務めるアダム・スミス氏)。

図●地図作成機能「Map Maker」の概要
図●地図作成機能「Map Maker」の概要
利用者自身が地図上に地名を書き込んで、地図を充実させていくことができる
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 そこでグーグルは、利用者の力を借りて非ネット情報を集めることにした。その取り組みの一つが、「Map Maker」と呼ぶ地図作成機能だ()。利用者自身が地図上に地名や建物名などを書き込んでいける。利用者自身が編集できるオンライン百科事典「Wikipedia」と同様の手法を採用した。グーグルが地図情報の質と量が不十分と判断した、十数カ国向けに提供している。