本格的な“情報爆発”時代を迎え、企業や社会における情報活用戦略は大きく変わろうとしている。そこでは、CIO(最高情報責任者)に求められる役割も変わらざるを得ない。これからのCIO像について、ITリサーチ最大手の米ガートナーのシニアバイスプレジデントで「ガートナー・エグゼクティブ・プログラム(EXP)」を統括するデール・カトニック氏に聞いた。(聞き手は志度昌宏=ITpro

ガートナーは、「2015年までにグローバル企業2000社のほとんどで、CIOの年俸はITがもたらした収益によって決まる」とした。その理由は何か。

 ITに期待される役割が、業務変革を起こすための仕組みとなり、顧客へどうリーチするか、売り上げをどう拡大するかに変わってきたからだ。こうした傾向は15年ほど前から続いているが、現在の経済環境下において、より明白になっている。

 これまでのCIOは、テクノロジーを理解していることが重要だった。だが、ITはこの40年間で成熟したし、企業での利用も進んできた。ただ、財務や管理関係、人事・総務といったアプリケーションは業務をサポートするもので、ビジネスを進化させるという機能は果たせない。インターネットが台頭したことで、顧客に向けたサービスの重要性が増している。

 加えて、リーマンショック以後の厳しい経済環境において、企業はコスト構造を最適化することを迫られた。その結果、自動化による人員削減やITコスト自体を削減することで、記録的な好業績を出す企業も現れた。ITがビジネスや業務に与える影響力が高まっていることが再認識されたのだ。

 かつてのITは社内の実態をみるために存在した。しかし、これからのITは、ビジネスパートナーや顧客など、社外の実態を把握するために使われる。それにより、これまで実行できなかったビジネスを可能にすることが求められている。

収益ベースで評価されることは、CIO自身が望んでいることか。あるいはCEO(最高経営責任者)などからの要望か。

 大きく三つの要因が同時進行している。一つは、CIO自らがビジネスリーダーになりたいと望んでいることだ。キャリア形成という意味で不思議ではないだろう。CIOの15~20%は、「ITが新しい力を持ち、ビジネスや業務への影響力が高まっている」ということを理解している。背景には、業務部門出身者がCIOに就く傾向が強まっていることもある。既にCIOの35~40%が業務部門出身者になっている。

 もう一つは、CIO以外の取締役からのプレッシャーの高まりだ。業務部門の幹部は、IT投資額が大きいことをしっている。同時に、CIOが変化対応の俊敏性や事業拡大を支えてくれることも理解している。それだけに、ビジネスサポートではなくビジネス拡大にITを適用してほしいとの考え方が強まっている。

 データセンターや電子メール、ERP(統合基幹業務システム)といったシステムが、きちんと運用・保守されることは、もはや当たり前になった。CEOらは最終的な成果を求めているのであり、システムを作ることに頭を使ってほしいとは思っていない。例え、作ることが“楽しい”行為であってもだ。

 そして最後の要因がテクノロジーの変化である。プロセサやメモリーは進化し続けているし、ITベンダーが提供する商品も、インターネットベースにシフトしてきたことで、種々のコラボレーションが容易になってきている。

 これからは顧客やパートナーとの関係構築や、M&A(企業の統合・買収)といった領域に、CIOが関与していかなればならない。そのためには、次のようなテクノロジーが必要になる。

 個人を把握するためのマーケティングやレコメンデーション、成功パターンの見つけ出すためのデータ分析、商品開発に向けたコミュニティーを形成するソーシャルネットワークなどだ。これらのテクノロジーの必要性がクラウド利用を推し進めることにもなる。