本格的な“情報爆発”時代を迎え、企業や社会における情報活用戦略は大きく変わろうとしている。並行して、情報システムの構築・運用手法も“所有から利用へ”と確実に変化している。いずれもが、テクノロジーの進化によってもたらされている。仮想化の最新事情と、これからの取り組み方について、ITリサーチ最大手の米ガートナーのリサーチ バイスプレジデントであるキャメロン・ハイト氏に聞いた。

(聞き手は志度昌宏=ITpro

仮想化技術に対する認知が進み、その導入例も珍しくなくなってきた。先行企業は今、どのようなことに取り組み始めているか。

 仮想化技術は、サーバーの構築方法など、既存のコンセプトを変えてきた。仮想化によるメリットを期待して導入した企業が今、直面しているのは、仮想環境の運用問題である。

 例えば、コンフィグレーションマネジメントにおけるディスカバリーやキャパシティプランニングなどにおいて、これまでとは異なる概念を考慮しなければならなくなってきたからだ。具体的には、物理的なサーバーが対象ではなく、動的再配置されたり移動したりしてしまう仮想サーバーをどう把握するかが問われている。

 仮想化環境を導入した企業は実は、仮想マシンの“増殖”に悩んでいるはずだ。従来ならシステムを拡張するに何カ月もかかってきたが、仮想マシンは、それこそ数分で拡張できてしまう。だが、その管理やモニタリング、パッチファイルの適用などは、これまでと変わらない。拡張の容易さゆえに、どんどんと仮想マシンを作れば作るほど、管理は煩雑になっていく。

サイロ化したサーバーの運用管理を容易にするのが、仮想化技術ではなかったのか。

 すべてのテクノロジーはメリットを提供すると同時に、新たなデメリットも生み出してしまう。例えば、インターネットは今や社会インフラとして欠かせなくなったが、一方でセキュリティという大きな課題ももたらした。

 とはいえ悲観的になる必要はない。仮想化技術の導入は、むしろビジネスアプリケーションの導入と類似している。ERP(統合基幹業務システム)ソフトの導入事例を考えてほしい。多くの企業が、ERPソフトの導入をきっかけに、それまでの業務プロセスや運用を見なすことで、メリットを引き出してきた。仮想化技術を導入したことで、これまでの運用形態を見直し、次のステップに進めばよい。

 ガートナーが提唱する成熟度モデルでいえば、現状は「レベル2」で、安定したプラットフォームを提供するためのオペレーションを準備している段階だ。これが、「レベル3」になれば、運用はアプリケーションセントリック(中心)になり、基幹系システムにも適用できるようになる。成熟度モデルでは、段階が高まるほど、サービスの提供速度が速まり、コストも下げられる。

仮想化と並行して、クラウドコンピューティングへの注目も高まってきた。

 2012年までに主流になってくるのは、プライベートクラウドだ。しかし、プライベートクラウドの構築は、仮想化技術の視点で見ても、大きな変化になる。上述したような運用課題を乗り越え、アプリケーションやサービスに焦点を当てた展開が不可欠になるからだ。