NTTデータは2010年10月29日、米国のITサービス企業のキーンを買収することで、同社と合意したと発表した。この12月にも買収が完了する。今後、NTTデータはキーンを軸にグローバルの組織再編に乗り出す。

 買収額は非公表だが14億ドル(1162億円)前後とみられる。これは2005年以降、16社の海外IT企業を買収してきたNTTデータにとって、最大の買収額である。

図●NTTデータの海外売上高
図●NTTデータの海外売上高

 NTTデータは2013年3月期に海外売上高3000億円、海外売上高比率20%を目標にしている()。2010年3月期の海外売上高が700億円であることから、3000億円は決して達成が容易な数字ではない。それでも同社は目標の達成にこだわる。

 「国内市場は先細る。ユーザー企業はどんどん海外に出ている。日本企業の海外拠点のサポートを勝ち取るという意味だけでなく、海外市場そのものを開拓する上でも、海外拠点の整備は重要」。海外戦略を指揮する、グローバルITサービスカンパニー長の榎本隆 代表取締役副社長執行役員は、NTTデータの危機感をこう話す。

 目前の2011年3月期の海外売上高の計画は、前年同期比300億円増の1000億円。300億円を積み増すために4月以降、売上高が約103億円の米インテリグループなど6社を買収してきたが、まだ足りなかった。今回、2年越しの交渉で約654億円の売上高を持つキーンを買収することで、2011年3月期の1000億円は達成できる見込みだ。

 海外売上高の単なる上積みにとどまらず、キーン買収により北米の顧客基盤を手に入れる意義は大きい。キーンの主なユーザーはモルガン・スタンレーやハネウェル、ファイザーなどだ。榎本副社長が「キーンはミニNTTデータ」と言うように、顧客の上位20社が売上高の半分以上を占めることや、公共や金融、一般企業からそれぞれ同程度を売り上げることが、NTTデータと似ている。

 業種別の営業体制やソリューションを持つ点でも似通っており、そうした似た者同士のメリットを生かして、北米市場に本格的に開拓する。これに向け、これまで買収した北米子会社を、キーンを軸に集約・再編し、NTTデータ本社も含め人材を交流させる。2年以内にソリューションや開発プロセスなどの共通化も進める。

 ただ北米で1000億円を稼いでも、2013年3月期の3000億円はまだ遠い。次にNTTデータが攻略を目指すのは欧州とアジアだ。これまでもそれぞれの地域でIT企業を買収しているが、榎本副社長は「キーン級のミニNTTデータを、欧州ならびにインドを含むアジアでも買収する」と話す。「それぞれの地域で1000億円ずつ稼いで3000億円を達成する」(同)。並行して南米やスペイン、北欧といった“空白地帯”でも買収を進める計画だ。