困惑するAndroidのマスコットロボットとJavaのマスコットDuke

 米Oracleが米Googleを訴えている裁判には注目する必要がある。Oracle側は「AndroidはJavaプラットフォームの知的所有権を侵害している」と主張している。Google側はこれを全面的に否定し、「この訴訟はオープンソースへの攻撃だ」と非難する。両社は全面対決の構えだ。

 もともと携帯電話業界では大手企業同士の訴訟は頻繁に起きている。Androidに関係する裁判だけを見ても、Apple対HTC(関連記事)、Apple対Motorola(関連記事)の裁判が進行中だ。

 そうした中でなぜOracleとGoogle裁判に注目するかといえば、第1に「Android開発の事実上の本丸」であるGoogleが直接の標的となる大型訴訟であるからだ。第2に、訴訟の経緯によってはGoogle 1社にとどまらず、他のAndroidスマートフォンを開発製造するメーカーにも影響がおよぶ可能性があるからだ。第3に、この訴訟はAndroidだけにとどまらず、オープンソースソフトウエア(OSS)の今後に大きな影響を与える可能性が高いからだ。

 現時点での事実関係と双方の主張を見てみよう。

 2010年8月12日、OracleはGoogleを訴えた(Oracleの訴状)。その主張は前述のように「AndroidはJavaプラットフォームの知的所有権を侵害している」とするものだ。具体的には、表1に示す7件の特許および著作権の侵害を主張している。Javaプラットフォームは、旧Sun Microsystems社(以下、Sunと表記する)が開発した。OracleがSunを買収したことに伴い、現在Javaプラットフォームの知的所有権はOracleの管理下にある。

表1●Oracleが侵害されたと主張する7件の特許
Protection Domains To Provide Security In A Computer System (6,125,447)
Controlling Access To A Resource (6,192,476)
Method And Apparatus For Preprocessing And Packaging Class Files (5,966,702)
System And Method For Dynamic Preloading Of Classes Through Memory Space Cloning Of A Master Runtime System Process (7,426,720)
Method And Apparatus For Resolving Data References In Generated Code (RE38,104)
Interpreting Functions Utilizing A Hybrid Of Virtual And Native Machine Instructions (6,910,205)
Method And System for Performing Static Initialization (6,061,520)

 Googleはこれを受けて、翌8月13日に「訴訟には根拠がなく、Googleとオープンソースコミュニティへの攻撃である」との声明文を一部のメディアを通して発表した(BlogメディアのTechCrunchEngadgetには声明文全文が掲載されている)。両社は全面対決することが、この段階ですでに予感された。

 2010年10月4日、GoogleはOracleの主張に反論する文書を裁判所に提出した。この文書の中で、GoogleはOracleの主張をすべて否定し、さらにOracleの主張はオープンソースコミュニティへの攻撃であり、同社の今までの言動とも矛盾していると述べている。

 Googleの反論を受けて、Oracleは「GoogleはJavaの分断化(fragmentation)を助長している」と非難する声明を出した(BlogメディアのTechCrunchに、Googleの反論書とOracleの声明が掲載されている)。Oracleが「分断化」を取り上げたのは、この声明からと思われる。訴状では「分断化」は論点とされていない。

 記事執筆時点では、この裁判の当事者が公表している情報は以上で全てだ。本記事では、両社の提出した文書を主な材料として、この裁判について考えることにする。