様々な場面で情報活用への期待が高まっている。ニーズとシーズが完全に噛み合った結果である。そして、この状況を下支えしているのがストレージだ。ストレージの進化なしに、現在の、そしてこれからのIT環境は存在し得ない。“情報爆発”に耐えられるストレージ環境のあり方を探っていく。今回は、ストレージ環境への過剰投資を防ぐための、ストレージ統合をストレージ仮想化について考えてみよう。

 第1回で、「ストレージの容量ベースでの増加率を見ると、『5年間で10倍』という勢いが数年前から止まらない状況になっている」ことを紹介した。ストレージ装置のきょう体内に搭載している容量が増えていることはもちろんだが、深刻な問題が別なところに潜んでいる。容量はもとより、外付けストレージの台数そのものが増大する傾向にあることだ。台数増加は、IT環境としては切実な問題ととらえたほうが良い。

 ITの変遷を振り返ってみると、ストレージ台数の増加は当然の結果であることが分かる。オープンシステムの普及は、メインフレーム主体の業務形態を分散コンピューティング形態へと移行させた。複数のシステムがサービス/アプリケーション単位に実装され、かつシステムごとに外付けストレージを用意する。そのため、サイロ化したシステムと同数の外付けストレージが存在することになる。

ストレージの低価格化が台数増を生む

 ストレージ容量が限られ、高価な時代には「ストレージを共有する」という考え方が強かった。しかし、エントリーモデルのストレージでさえ相応の容量を搭載し価格も安いという状況にあっては、システムごとに外付けストレージを購入することが“当たり前”のようになっている。どのメーカーのストレージ製品も、売れ筋はエントリーモデルからミッドレンジに集中し、売上台数が伸びているという事実が、この流れを裏付けている。

 ストレージの課題として、よく挙げられるものを列挙したのが図1だ。課題の根本原因は、機能が限定された安価な外付けストレージを大量に抱えている点にあると、言えるのではないだろうか。 企業全体で、何台のストレージを保有しているのか、実際にカウントしてみるとよい。

図1●ストレージの乱立が生み出す多くの課題
図1●ストレージの乱立が生み出す多くの課題
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 実は、だれも把握していないのが通常だ。社内のストレージ台数は、予想をはるかに上回るはずである。そこには、大きく二つの危険が潜んでいる。一つはTCO(所有総コスト)の問題だ。比較的安価なエントリーモデルであっても、保守費や設置場所の費用などを積み上げると、かなりの金額になる場合が多い。購入費用が部門ごとの予算に分割されると、この問題は見えにくいが、会社全体としてはかなりの費用がかかっているはずである。