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米国スマートグリッド事情

スマートメーター導入は一筋縄ではいかない

2010/11/26 ITpro


米IP Devices代表
岸本 善一

 スマートグリッドは、送電・配電の最適化やモニタリング、再生可能エネルギーの取り込み、電気自動車の投入、スマートメーターなど、多岐にわたる分野の製品/技術で構成される。先行する米国では、この中でも特にスマートメーターの導入を巡って、議論があった。今回は、なぜスマートメーターが必要なのか、どういう仕組みなのか、使用上の問題点は何かについて解説する。

なぜスマートメーターが必要なのか

 スマート(賢い)メーター以前のメーターは、ダム(馬鹿)メーターと呼ばれ、電力使用量の累積を表示するだけのアナログメーターだった。情報通信技術の発達と電力を取り巻く環境の変化により、アナログメーターの弱点が顕在化してきた。弱点は大きく二つある。

(1)発電にかかるコストを電気料金に反映できない

 発電にかかるコストは季節により変動する。一日のうちでも、深夜は電力需要が低いため発電にかかる費用も低い。午後は一般的に需要が増加し、ピーク時にはコストの高い発電所や発電機を稼働させるため、発電費がかさむ。しかし、総使用量の情報しか取得できないアナログメーターでは、発電コストを加味した課金ができない。電気料金が規制されていることもあり、ピーク時コストが上がっても、電力会社がそれを効率的に回収する方法がない。

(2)限定された電力需要情報しか提供しない

 消費者はいつでも自分の都合で電気製品のスイッチを入れたり切ったりする。電力会社はその情報を得ることができず、刻々と変化する総需要のみを見ながら発電機を追加したり止めたりして、需要と供給のバランスを図る。このバランスが崩れると電力網全体が不安定となり、停電が起こる。総需要だけでなく、実時間で消費パターンを知ることができれば、このバランスを取る操作が軽減され、電力を安定して供給することができる。

 電気代を払う仕組みは、普通の消費活動に伴う支払いに比べ分かりにくい。ある専門家はこれを「今の電気代請求は、まるでメニューが無いレストランに行って、しかも1種類しかない料理を食べて、請求書は30日後に来るようなものだ」と表現した。料理は1種類しかないからメニューは要らないが、料金が分からない。そんなレストランに、人は行くだろうか。

 2人の消費者がいたとしよう。1人は昼間ほとんど家におらず、夜遅くにしか帰ってこない。電気の使用は朝と夜に限られる。もう1人は日中家にいて、電力需要の高い午後に電気を使用する。もしこの2人の電力の総消費量が同じであれば、後者の方が電力会社により多くのコストを発生させているにもかかわらず、現在のアナログメーターでは前者は同じ料金を課せられる。

 電力会社から見たとき、スマートメーターは消費者の電力消費状況を実時間で捕捉することができ、それに応じた発電や電力の割り振りを行うことができる。また需要過多で電力不足に陥った際に、自動的に消費者の電気機器を操作して消費を抑えることもできる。消費者にとっては、自分の消費電力を実時間で把握できるようになる。ダイナミックに変化する電気代を知ることにより、電気代が高い時間帯の電気使用を避けたり、電力不足が起きている場合に使用を控えて停電を防止したりするといった、電力の賢い使い方をすることができる。

 ここまでスマートメーターに切り替えるメリットを述べたが、これは必ずしも日本には当てはまらない。時間帯に応じた課金はスマートメーターで可能になると米国では考えられているが、東京電力によれば、現在日本の電気メーターはネットワークでつながってはいないが、3種類の積算メーターが内蔵されており、タイマーが作動して3つの時間帯(ピーク時、平時、安価時)に対応した課金ができるようになっているとのことだ。つまり日本では、スマートメーターの機能の一つが既に実装されているのだ。また米国では、電力不足に対処するためにスマートメーターを利用しようとしているが、電力不足の無い日本では、そうしたスマートメーターのメリットはあまり意味が無い。米国で期待されるスマートメーターの役割の一部は日本ではあまり意味を持たないということも念頭において、以下、米国におけるスマートメーターについて読んでほしい。

スマートメーターのアーキテクチャー

 スマートメーターとそれを支えるインフラ(AMI:Automated Metering Infrastructure)を簡単に説明する。メーターは既存のものに通信機能を付け加えるのではなく、通信機能を持つデジタルメーターと交換する。通信機能はいくつものプロトコルが検討されたが、大部分のメーターはZigBeeのプロトコルを採用している。筆者の家のメーターはGeneral Electric(GE)製だがZigBeeのチップを搭載している。GEのほか、Itronなどがスマートメーターを製造販売している(写真1)。

写真1●スマートグリッドのコンファレンスにおけるItron社のブース
写真1●スマートグリッドのコンファレンスにおけるItron社のブース
写真2●電柱に取り付けられたネットワーク収集ポイント(提供:PG&E社)
写真2●電柱に取り付けられたネットワーク収集ポイント(提供:PG&E社)

 電力使用データはメーターと収集ポイントの間、ZigBeeで無線通信する。収集ポイントから先は、セルラーのCDMAなどの通信プロトコルで電力会社(北カリフォルニアではPacific Gas and Electric Company(PG&E))まで届けられる(写真2)。


スマートメーターの設置

 メーターの交換は10分程度で完了する。家庭への電力供給をいったん停止する必要があるので、5分程停電する。スマートメーターは家庭と電力会社をつなぐためのインフラとして必須なので、消費者の意思とは無関系に電力会社が州のPUC(公益事業委員会)の認可を受けて設置する(写真3写真4)。

写真3●これまで使用されてきたアナログメーター(北カリフォルニア)
写真3●これまで使用されてきたアナログメーター(北カリフォルニア)
写真4●アナログメーターに替わり取り付けられたスマートメーター
写真4●アナログメーターに替わり取り付けられたスマートメーター

 消費者は自分が直接金を払うのでなければ、新たなサービスに無関心なものだ。PG&Eの地域では、スマートメーターを1個設置するのに、メーター代も含め約2万2000円かかる。全体では2200億円程度かかる計算だが、この費用は実は最終的に電気代に上乗せされる。

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