ここまで見てきたポスコなど韓国企業の取り組みから、IFRS(国際会計基準)対応に関する“真実”が浮かび上がる。(1)IFRS対応の完了時期はアダプション(強制適用)の1年前、(2)プロジェクト期間は平均で1年半、費用は30億円程度、(3)システムの変更は必須、の三つだ()。

表●日本と韓国のIFRS適用状況の比較<br>韓国企業の現在の状況は4年後の日本企業にとって参考になる
表●日本と韓国のIFRS適用状況の比較
韓国企業の現在の状況は4年後の日本企業にとって参考になる
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図●韓国企業から分かったIFRS対応の真実
図●韓国企業から分かったIFRS対応の真実
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 IFRS対応を進める日本企業にとって、対応をいつ完了するか、すなわちゴールをいつとするかは悩ましい問題だ。韓国では、ゴールは「比較期間の開始時」とするのが一般的である。比較期間の開始までに準備を終えてIFRSの適用を始め、アダプション開始までの1年を問題点の修正に充てるという考え方だ。

 ポスコに限らず、「2010年に入ってIFRS対応の準備がひと段落した」というのが主要な韓国企業の実態だ。

 2010年に対応が間に合わなかった企業も、もちろんある。「ひと通りIFRSを学んだ結果、『当社に影響ない、十分間に合う』と過信している企業が遅れた企業の典型例だ」とプライスウォーターハウスクーパースグループの韓国法人であるサミル会計法人(PwC韓国)のユン・フンス パートナーは強調する。併せて、中小企業の対応が遅いとの指摘もある。

強制適用の決定前から着手

 2010年に間に合った韓国企業は、対応にいつ着手したのか。監査法人デロイトアンジン FSIコンサルティンググループのチョ・ソンマン パートナーは、「大企業の多くは08年6月くらいに本格的なプロジェクトチームを発足させた」と証言する。ポスコと同様、準備期間は1年半というのが大企業の平均値だ。

 IFRSのアダプションが決定してからプロジェクトが発足するまでの1年間は、経理・財務部門を中心にIFRSの勉強を進めた。韓国では08年末に韓国語版が出版されるまで英語版IFRSしかなく、勉強に時間がかかった。

 特に「IFRSの影響を大きく受ける金融やグループ会社が多い大企業は、アダプションの正式決定前から準備を始めていた」(チョ パートナー)という。日本でも金融や商社は影響が大きいといわれている。早めの着手が重要だ。

 1年半でIFRS対応にかかった費用はコンサルタントや識者の意見を総合すると、大企業の場合平均で300億~400億ウォン(24億~32億円)程度となる。かなりのコストがかかると覚悟すべきだろう。