「グループ会社を含め、今年からIFRS(国際会計基準)の適用を始めた。影響を大きく受ける情報システムの変更や内部統制の整備も終わり、準備は整った」。韓国鉄鋼最大手のポスコで常務/財務室長を務めるイ・ヨンフン氏は、IFRS対応の状況をこう語る。

 韓国は2011年度から、会計基準そのものにIFRSを採用する強制適用(アダプション)を始める。ポスコは適用対象の1社だ。情報システムの活用で、アダプションの1年前にIFRS対応を終えた。

 ポスコをはじめとする韓国の上場企業が置かれている状況は、“日本企業の4年後”といっても過言ではない。日本では最も早くて15年度からIFRSのアダプションが始まる見通しだ。

 多くの日本企業にとってIFRS対応は未知の体験である。韓国企業から学べるポイントは多い。まずポスコがどうIFRS対応を進めたかを見ていこう。

システムを活用し2年で対応

 ポスコの2009年12月期の連結売上高は2兆9040億円、従業員数は約3万人に上る。IFRSの適用対象となるグループ会社は韓国内外合わせて150社以上ある。

 これほどの規模にもかかわらず、ポスコはIFRS対応を2年で終えた。ポイントは大きく二つある。一つは、情報システムを活用して業務の標準化を徹底したこと。もう一つは、グループを巻き込んでプロジェクトを推進したことである(図1)。

図1●韓国の鉄鋼最大手ポスコのIFRS対応のポイント
図1●韓国の鉄鋼最大手ポスコのIFRS対応のポイント

 12月期決算のポスコが、アダプションの1年前である今年1月からIFRSの適用を始めたのは、比較期間が始まるからだ。アダプションの1期前は、 IFRSに基づく連結財務諸表と、これまで利用していた韓国の会計基準に基づく財務諸表の両方を作成する必要がある。これは日本も同じだ。