様々な場面で情報活用への期待が高まっている。それだけに、データ量の増加には歯止めが利かない状況になっている。ニーズとシーズが完全に噛み合った結果であり、それを下支えしているのがストレージだ。ストレージの進化なしに、現在の、そしてこれからのIT環境は存在し得ない。本連載では、“情報爆発”に耐えられるストレージ環境のあり方を探っていく。今回はまず、データ量の増大がストレージに何を求めてきたかを振り返ってみよう。

 「情報」という単語を辞書で調べてみると、「文字・数字などの記号やシンボルの媒体によって伝達され、受け手に状況に対する知識や適切な判断を生じさせるもの」と記されている。このとき、「情報を入手する方法」を思い描いてみると、インターネットやニュース、新聞、辞書などが浮んでくる。そして今日、これら情報媒体の基本になっているのはデータである。

 至極当たり前のことなのだが、現代のように情報量が多いことはすなわち、データ量が多いことを意味している。昨今指摘される“情報爆発”は、データ量の飛躍的な増大を引き起こしているのである。

 ストレージの最も基本的な役割は、データを記憶することとリクエストに応じてデータを配信することだ。それだけに、情報爆発がストレージに及ぼす影響は非常に大きいといえる。実際、ストレージの増加率を容量ベースで見ると、「5年間で10倍」という勢いが、ここ数年前から止まらない状況が続いている。

データは世界中で24時間、作成・配信・保管されている

 データ量の爆発を引き起こしている要因は多岐に渡る。だが、その背景にはITトレンドの変遷がある。1980年代に入り、オープンシステムの導入が進むことでサーバーコンピューティングの時代に突入した。同時に、システム間でデータを共有するためのネットワーク網の拡充が進んだ。

 GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)によりコンピュータを直感的に操作できるようになると、操作に関する専門知識は不要になり、PCが一般家庭にまで普及するようになる。そして、ダメ押しがインターネット技術の発達だ。

 携帯電話に代表されるワイヤレスの通信端末は、「いつでも・どこでも・好きな時に・必要な」情報にアクセスできる環境を作り出した。あらゆる人が「情報(データ)」を欲している裏側では、データが作成され、配信され、保管されることが繰り返されている。データの作成・配信・保管が世界中で24時間続けられているのだから、データ量の増加には歯止めが利かない状況になっていても致し方ない。

 このように、ニーズ(顧客の要求や嗜好)とシーズ(テクノロジーや製品)が完全に噛み合った結果として社会生活そのものが根本的に変化した感がある。そして、その下支えをしているのがストレージなのだ。かつては「補助記憶装置」と呼ばれたように、メインメモリーの欠点を補うための装置だった。しかし、ストレージの進化なしに、現在のIT環境は存在し得なかっただろう。