IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

部下のヒソヒソ話に割り込むダメな“システム屋”課長
ダメな“システム屋”の会話 部下A 「また“ツメツメ”があったそうだね」
部下B 「ああ“ツメツメ”が聞こえてきた、というか無理矢理聞かされたのかな」
A 「ということは、課長席に呼びつけてということ?」
B 「うん、課長席の前に立たせて、周りに聞えよがしに」
A 「つまり、いつものパターンというわけだ」
B 「かわいそうだったのは“ツメツメ”されたC君だけど、周囲にいた僕もいたたまれないよ」
A 「C君は何かやらかしちゃったのかな?」
B 「いや、これまたいつものパターン。仕事が遅かったのをとがめられて、クドクドと・・・」
A 「課長は下にはめっぽう強いというか、厳しいというか、ひどいというか」
B 「これをいじめと言わずに何と言うか、だな」
A 「おい、噂をすれば何とやら・・・」
ダメな“システム屋”課長 「おい!何べらべらしゃべってるんだ!サボっていると、お前らもツメツメしちゃうぞ!」
B 「あ、課長、お疲れ様です」
A 「課長、あちらに部長がいらっしゃいますよ!」
ダメ課長 「え?あっ部長!どうもお疲れ様です!お忙しいのに、むさ苦しい部下がいるこんなところまでよくお越しに。あ、どうぞ、どうぞ・・・」
A&B 「(ふぅ、やれやれ・・・)」

ダメな理由:下に強く、上に弱い

 前回指摘した「意味ナシおじさん」より、もっとたちが悪いのが「ツメツメ課長」です。

 世の中には、部下や後輩、知識・能力が劣る人、つまり“下”の人に対しては強く厳しく当たる性質を持つ人がいます。上下左右いずれの方向にも強い・厳しい人に対しては「強い」「厳しい」という表現が合いますが、下にだけ強い・厳しい人には「ひどい」とか「いじめ」といった表現を使うべきでしょう。

 この手のダメな“システム屋”は、下に厳しく当たることで自分の価値を確かめる傾向があります。そして上に弱腰である理由は、自分の価値が認めてもらえるかどうか不安だからではないでしょうか。実は、下に対しても上に対しても、自信がないのです。こういう人に限って、部下・後輩であっても実力がある人には「いじめ」を発動しなかったり、上司・先輩であっても自分の評価に直接関与しないだろう人には無関心だったりします。

 下に強く、“上”に弱い人はどこの世界にも生息しますが、特に“システム屋”の世界では次のような被害をまき散らします。

 “システム屋”の世界では、失敗は個人の失敗にとどまらず、チームや組織の失敗に直結します。バグや考慮漏れについては周囲のメンバーや先輩たちがカバーすればいいだけのことです。力不足なメンバーがいても、失敗そのものをクドクドと叱責(しっせき)することは意味がありません。周りが失敗をカバーすれば、それで済む話です。

 実は、ダメな“システム屋”が下の人をクドクドと攻撃するのは、主に、仕事が遅いという理由によるようです。まだできないのか、どれだけ時間がかかっているのか、何度やり直せば済むのか、やる気があるのか、能力がないんじゃないか、などなど。

 私が中堅の“システム屋”だったころ、数年先輩に「ツメツメしちゃうぞ」と言うのが口癖の人がいました。

 「ダメ出しをする」というよりも、「詰める」「問い詰める」という意味のようです。それも長時間にわたって詰め続けるのです。まさに「ツメツメしちゃうぞ」という表現がぴったりで、本人もこの表現を気に入っていました。

 この人は“システム屋”個人としては天才肌で、若いころは期待されてもいました。しかし、役職が上がるにつれ、相対的に評価は下がり続け、特に部下や後輩からひどく嫌われるようになりました。

 この人、すなわちツメツメ課長が上司や先輩に対しても厳しく意見を言うのであれば、たとえ怖がられても、尊敬を集めたかもしれません。しかし、そうではありませんでした。上司・先輩に対してはつまらない冗談を連発しては、ヘラヘラと笑っていただけです。