iアプリ開発者向けのイベント「iアプリ・デベロッパーズキャンプ in Tokyo」が2010年9月25日、都内で開催された。このイベントは、NTTドコモが開設するドコモマーケット(iモード)向けiアプリを、参加者が実際に開発して学ぶものだ。NTTドコモが無償公開したビジュアル開発ツール「AppliStudio」や、新しく個人にも開放されるGPSを利用したアプリケーション開発をハンズオンで体験する。

 iアプリの開発ハンズオンに先立ち、午前の部ではiアプリDXやドコモマーケット(iモード)についての講演が行われた。最初の登壇者、NTTドコモのコンシューマサービス部 ネットサービス企画 サービス戦略担当課長の山田和宏氏(写真1)は、iアプリの歩みとドコモマーケット(iモード)について解説した。

NTTドコモ コンシューマサービス部 ネットサービス企画 サービス戦略担当課長 山田和宏氏
写真1●NTTドコモ コンシューマサービス部 ネットサービス企画 サービス戦略担当課長 山田和宏氏

4900万端末が暮らす、巨大市場の“ガラパゴス”

 「iアプリは南国の楽園の夢を見るか」と題された山田氏の講演は、ガラパゴスと呼ばれている既存の携帯電話の世界が、独自ではあるが「多様で成長し続ける場」であることをアピールした。

 iアプリの歴史は2001年1月、「503iシリーズ」から始まった。当時のiアプリは「DoJa-1.0」というJavaのプロファイル上で動作した。DoJa-1.0は、アプリ自体のデータが入ったロジック(圧縮形式のJAR)と、セーブデータなどを保存するデータ領域であるスクラッチパッド(Scratchpad)が、それぞれ上限10Kバイトという制約があった。それにもかかわらずサイズの制約を乗り越え、RPGゲームがリリースされるなど、当時としてはかなりリッチなコンテンツプラットフォームだった。

 スタート時点でのiアプリは、いわゆる「公式アプリ(公式サイトのアプリ)」と「勝手アプリ」で使える技術に差がなかった。公式アプリと勝手アプリとの間に技術格差が生まれるのは、ダウンロードサイトとの通信や端末本体データの利用などが可能になったiアプリDX(2003年5月、505iシリーズより対応)のリリース以降である。今回のドコモマーケット(iモード)が法人個人問わず利用できるのは、ある意味で原点回帰とも言える。

 iアプリはその後、データ容量が最大1Mバイトに拡張されたメガアプリを経て、新プロファイルであるStarへと移行していく。Starアプリは、DoJa端末では動作しない。ただし、正式な対応ではないが、Starプロファイルの端末上では、DoJaアプリが動作する可能性はある。「過去の資産をなるべく生かしながら新たな機能を追加しようと考えていた。だが、これは個人的な考えだが、互換性と進化を完全に両立させるのは難しいと、このとき明確に感じた」(山田氏)。結果的に「二兎を追って追いきれなかった部分もある」と述べた山田氏だが、「逆に互換性を重視したことに賛同の声もあった」という。

iアプリはシンプルなアプリからでも始められる

 iアプリは、よりリッチなコンテンツが提供可能なプラットフォームとして進化してきたが、一方で進化に伴って誤解も生まれたと山田氏は指摘する。

 「自戒の意味も込めてだが、進化に伴って(開発の)敷居が高くなったという誤解がある。リッチなアプリしか動かないわけではないが、まわりのアプリのレベルが高くなってきたために、そう思われてしまった」(山田氏)。こうした風潮に対して、「(iアプリは)シンプルなアプリをシンプルに作るところから始められる。その辺を意識してもらいたい」とメッセージを送った。

 また、独自路線に進んだ機能についても言及。「標準化しようする動きもあったが、特に国際標準となると、実際のマーケットの動きをどのように取り入れるかが難しい。なるべく速く、よりリッチな生活をお届けしたいという思いから、ともすれば独自路線につながった部分はあるかもしれない」と振り返る。

 一方、結果として機能面の充実度は高い。スマートフォンの象徴ともいえるタッチパネルには2008年冬から、電子コンパスも2009年冬から対応している。実は「羅針盤」のようなiPhoneなどに搭載されたアプリも、すでにiアプリとしてリリースされている。ワンセグ録画予約など、ガラパゴスならではの機能もiアプリDXでは利用可能だ。