IT(Information Technology)という言葉からも容易にイメージできるように、コンピュータを導入し、そこから得られた情報を活用することは、企業にとって常に重要な課題である。テクノロジーが進歩したことで、企業が得られる情報は“爆発的”に増えた。情報活用のあり方も変えていかなければならない。

意志決定に役立つ情報を求めて

 最近も、「Web2.0」や「クラウドコンピューティング」が台頭してきたことで、顧客や消費者など企業の外に存在している主体が発するデータへの注目が高まっている。“爆発”と形容されるほど膨大かつ、とらえどころのない情報に、多くの企業が注目し、どのように付き合っていけば良いのかを模索している。

 これまでも、テクノロジーが進歩することで、ある種の問題が解決され、同時に、解決すべき新たな課題が生まれてきた。例えば、1990 年代前半には、ERP(統合基幹業務システム)などの業務アプリケーションパッケージが登場し、IT の貢献範囲は業務の最適化を意識するようになった。一方で、大量の業務データが蓄積されていくものの、意志決定の役に立つ「情報」にはなっていないという問題が深刻化し始める。

 90 年代後半は、インターネット時代の幕開けであった。企業間連携のコストが低下し、世界規模で情報発信することが容易になった。しかしそれは、企業に対し、外部からの不正アクセスからどのように情報を守るかという新たな課題を突きつけた。その後も、提供されるサービスやその利用方法は高度化を続け、利用者も拡大し続けている。その結果が、冒頭で挙げた“情報爆発”という状況である。

「Sense & Respond」から「Seek & Act」へ

 これまでの情報活用のあり方は、変化が起きたことをいち早く“感知”し、迅速かつ適切に“反応”することに主眼が置かれてきた。受動的なスピードを差別化の焦点とした「Sense & Respond」の実現においては、自動化が一つのゴールになる(図1)。

図1●「Sense & Respond」の情報活用モデル
図1●「Sense & Respond」の情報活用モデル
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 しかし、企業の競争優位の観点から見れば、「いつ、どこで、どのように発生するかが不明確な情報を、チャンスやリスクの兆しとしてとらえる」ことのほうが有用だ。それは決して簡単ではないが、競合他社に先駆けて、そうした情報を活用できれば、競合優位に立てる。

 今後は、企業経営に影響を与えるであろう“兆し”、すなわち「パターン」を積極的に見つけ出し、来るべき変化に備える、あるいは変化の発生を未然に防ぐための情報活用が重要になる。そうした情報活用戦略、あるいは、ビジネスリーダーが新たなビジネスパターンを探索・詳述・検討できるようにする手法を、ガートナーでは、「PBS(パターン・ベース・ストラテジー)」と呼んでいる。

 PBSの特徴 は、競争の勝ち負けを予見できる情報のパターンを、企業の内外へ能動的に“探し”に行き、パターンの発生を検知すれば、あらかじめ決めてある“行動”を起こすことにある。経営に変化が生じる前に、成功の獲得または失敗の回避を再現する「Seek & Act」である。そのためPBSでは、経営変化に通じるパターンを見出す頭脳ワークと、予兆を示すシグナル情報の発見を助けることが使命になる。