今回は、Windows MediaとFlashムービーによる動画再生のパフォーマンスを計測した。デスクトップ仮想化の仕組上、サーバーから端末への画面転送量が大幅に増える。Windows Media Playerでは、リダイレクション機能の有無が性能を大きく左右した。

検証(5)Windows Mediaの動画---RDP6以外は物理環境と同じ

 この検証では、Windows Media Playerで仮想マシン内のWMVファイルを全画面表示し、2分間の動画を3回再生して表示品質を評価した(合計6分間)。動画の解像度は1280×720ドットで100Mビット/秒のネットワークを使った。

 RDP7とICAでは物理環境と同等の表示品質だった(図1)。それに対してRDP6はブロックノイズが発生し、フレーム落ちが発生した。再生はできるが、利用は勧められない。再生時間はどの画面転送プロトコルもほぼ同じだった。表示品質を落として再生時間の帳尻を合わせている感じだ。

図1●Windows Media Playerによる動画再生
図1●Windows Media Playerによる動画再生
RDP7とICAでは仮想マシン側ではなく、クライアントソフト側で再生を行うことによって物理環境と同様な表示品質を実現している。RDP6ではブロックノイズが目立った。
[画像のクリックで拡大表示]

 利用帯域はRDP6が最大15.2Mビット/秒で、RDP7は同9.1Mビット/秒、ICAは同9.8Mビット/秒である。

 なお、この検証で使った動画では、2Mビット/秒に帯域を制限するとRDPでもICAでも利用に堪えなかった(次の検証(6)も同様である)。

 この動画の再生では、リダイレクションという機能の有無が、RDP7/ICAとRDP6の差につながっている。RDP7では「Windows Media Playerリダイレクション」という名称で、ICAでは「HDX MediaStream」と呼んでいる。原理は同じだが、実装は異なる。

 リダイレクション機能では、サーバーの仮想マシンが動画データをダウンロードしたとき、仮想マシンでデコードして再生せずに、仮想マシンがそのまま端末へデータを転送(リダイレクト)し、端末が持つコーデックを使って、端末が再生する。

 対応している動画フォーマットでしか利用できないという制限はあるが、動画再生の実用性を物理環境並みに高める技術として注目できる。

検証(6)Flashムービーの再生---ICAが独自の工夫で改善

 各画面転送プロトコルは、動画の種類によって対応状況や対応方法が違う。その様子を調べるために今度は、Flashムービーを再生した。Flashムービーは利用帯域が比較的大きい動画といわれている。YouTube上の21分の高精細(HD)動画(解像度は1280×720)を再生して表示品質を評価した。

 FlashムービーについてはRDP6とRDP7はリダイレクションのような機能はないが、RDP7はネットワークの回線が太ければストレスなく使えた。今回検証に使った動画では、RDP6は、RDP7よりも動画がカクカクと動く感じだった。特に人物が話をするとき、言葉と口の動きが一致しない。RDP7は、100Mビット/秒と帯域が十分あれば、多少カクカクするものの、気にならなかった。ただし、利用帯域は最大24.6Mビット/秒と大きい。

 ICAは物理環境における再生とほぼ同じ表示品質だった。ICAでのFlashムービーの再生では、HDX MediaStream for Flashという技術が利用できる。WMVファイルのHDX MediaStreamと異なり、端末がインターネット上のサーバーから直接動画ファイルを取得して再生する。

 一切データが届かないのでサーバーの負荷も低い。半面、端末がインターネットへアクセスできるようにする必要がある。