クライアントOSなどをサーバー仮想環境で動作させるデスクトップ仮想化。物理環境と異なるその仕組みのため、どんなアプリケーションが影響を受けるだろうか。ネットワンシステムズの奈良昌紀氏が検証したところ、大きな画像のスライドショー再生時間が長くなる、図をうまく描画できない場合がある、などの苦手分野が明らかになった。

 デスクトップ仮想化は、サーバー仮想化技術を利用してシンクライアントを実現する技術である。クライアントPCのOSやアプリケーションを、サーバー上の仮想マシンで動作させ、端末からネットワーク経由で遠隔操作する。クライアントにデータを置かないため情報漏洩に強く、サーバー側でシステムリソースを一元管理しやすいといった特徴がある。

 しかしその仕組みのため、操作性や画面表示の品質に影響が出るアプリケーションがあるのは確かだ。大きな画像を扱う、動画を再生するといった用途のアプリケーションである。

 デスクトップ仮想化製品を提供するベンダーは、端末とサーバー上の仮想マシンとの間で使う画面転送プロトコルの改良や、データ転送方式の変更で、そうしたアプリケーションの操作性を向上させている。

 そこで今回、デスクトップ仮想化製品としてCitrix XenDesktopを利用し、どんなアプリケーションや処理が苦手なのかを検証した。文字や画像、動画を扱う検証を行って「操作性」「表示品質」「処理時間」「利用帯域」を調べ、物理環境(通常のPC)を基準に、実力を評価している(図1)。

図1●利用するアプリケーション別の操作性や表示品質の評価
図1●利用するアプリケーション別の操作性や表示品質の評価
ドラッグによる図の描画は苦手だが、動画再生では物理環境と同等の表示品質の場合がある。
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 どのアプリケーションも画面転送プロトコルを変えて評価した。米MicrosoftのRDP(Remote Desktop Protocol)や米Citrix SystemsのICA(Independent Computing Architecture)のそれぞれで特性が違うことが予想されたためだ。RDPは、Windowsが標準装備しているプロトコルで、Windows Vista/Windows Server 2008でRDP6が利用できたほか、Windows 7/Windows Server 2008 R2ではRDP7にバージョンアップした(Windows XP/Vista用RDP7クライアントソフトも後に登場)。ICAはCitrix XenAppなど、Citrix Systemsの製品で広く利用できる。

 また、各画面転送プロトコルには、操作性をチューニングするための設定がある。その効果も検証した。

 図1に示した通り、Internet Explorer(IE)の文字スクロール処理では、3種類の画面転送プロトコルのいずれも、物理環境と同等の操作性があった。PowerPointのスライドショー再生では利用帯域が100Mビット/秒あれば、ストレスなく利用できる。しかし、利用帯域を2Mビット/秒に制限すると処理時間が長くなる傾向が見られた。

 Windows標準のペイントによる図形描画では、画面転送プロトコルの種類によって評価が分かれた。ICAは良好だが、RDPは利用を勧められない。

 一方、Windows Media PlayerやFlashムービーといった動画処理では画面転送プロトコルの種類によって異なるが、物理環境と同等の表示品質を実現できる場合があった。これは端末側で動画を再生する機能のおかげだ。