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 WANはLAN同士を結ぶ広域ネットワーク。WAN回線の終端装置を「DCE」、実際にデータを送受信する装置を「DTE」と呼ぶ。また、CCNAではルーターのシリアルインタフェースを使ってWANを構成する設定がよく出題される。詳細は後述するが、ここでは以上のポイントだけ頭に置いてほしい。

 現実の企業や組織では、通信事業者の提供するサービスを利用してWANを構築するのが一般的だ。ただしCCNAでは、二つのルーターのシリアルインタフェース同士を直結させたシンプルな形態「back-to-back接続」が出題されることも多い。問題はこのback-to-back接続でのトラブルシューティング問題である。

 まず「show ip interface brief」コマンドでルーターXのインタフェースを確認すると「Serial0/1」の「Status」が「up」、「Protocol」が「down」となっている。Statusはレイヤー1の状態、Protocolはレイヤー2の状態を表す。Serial0/1のレイヤー2の設定に何か問題があるのだ。

 つまり、選択肢の中でレイヤー2の問題に該当する選択肢b、dが正解となる。選択肢bで述べているように、レイヤー2のカプセル化プロトコルが対向のルーター同士で一致しないと、正常に通信できない。ちなみにシスコのルーターの初期設定では、カプセル化プロトコルはHDLCになる。なお、選択肢aの「IPアドレスが間違っている」はそもそもレイヤー3(ネットワーク層)の問題であり、show ip interface briefコマンドの実行結果を見てもIPアドレスに間違いはないので不正解だ。選択肢cの「インタフェースが故障している」はレイヤー1の問題なので、こちらも正解ではないとわかる。

 選択肢dに出てくる「クロックレート(clock rate)」とは、シリアルインタフェースがレイヤー2の信号をやりとりするタイミングのこと。2台のルーターをシリアルインタフェースでback-to-back接続した場合、「clock rate」コマンドでクロックレートを指定しなければならない図1)。

図1●back-to-back接続の設定を覚えよう<br>問題でルーターXにするべき正しい設定を示した。back-to-back接続の場合は、一方のルーターがDCEとしてクロック信号を出すことになる。そのため、「clock rate」コマンドを実行する必要がある。<span style="vertical-align: middle;"><img src="bar.jpg" width="40px"></span>はコマンド入力部分。
図1●back-to-back接続の設定を覚えよう
問題でルーターXにするべき正しい設定を示した。back-to-back接続の場合は、一方のルーターがDCEとしてクロック信号を出すことになる。そのため、「clock rate」コマンドを実行する必要がある。はコマンド入力部分。
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WANの種類とプロトコルを把握

 問題を解くのに直接必要ではないが、通信事業者が提供するWANサービスも覚えておこう(図2)。WANサービスは「専用回線」と「交換回線」の2種類に分かれる。専用回線では、接続相手をあらかじめ決めておく。単に「専用線」と呼ばれることが多い。一方、交換回線は通信ごとに相手を選択して接続し、通信が終了したら接続を切る。

図2●主なWANサービスの種類を押さえよう<br>WANサービスは専用回線、交換回線の二つに分かれる。さらに交換回線は、回線交換とパケット交換に分かれる。該当するWANサービス名、プロトコルとセットで覚えておこう。<span style="vertical-align: middle;"><img src="bar.jpg" width="40px"></span>はコマンド入力部分。
図2●主なWANサービスの種類を押さえよう
WANサービスは専用回線、交換回線の二つに分かれる。さらに交換回線は、回線交換とパケット交換に分かれる。該当するWANサービス名、プロトコルとセットで覚えておこう。
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 交換回線は、さらに公衆電話網(PSTN)やISDNといった回線交換サービスと、X.25、フレームリレー、IP-VPN、広域イーサネットなどのパケット交換サービスに分類できる。シスコのルーターのデフォルトであるHDLCは専用線やIP-VPNで利用される。その他のWANサービスについても、利用するプロトコルをセットで覚えよう。

Webサイトで確認!
WANプロトコル編 第1回 WANの基礎

■変更履歴
図1中で指定するIPアドレスを10.1.1.1としていましたが、正しくは172.16.1.1です。お詫びして訂正します。文字は修正済みです。 [2010/10/07 16:30]