NTTドコモが「ドコモマーケット(iモード)」を開設することを受け、iアプリ開発に新規参入する企業も現れ始めた。タウン情報アプリ「30min.」を開発するサンゼロミニッツもそのうちの一社だ。同社は2008年8月、GPSを利用して周辺の店舗情報を提供するiPhoneアプリをリリース。現在そのダウンロード数は24万に上る。スマートフォンから“ガラケー”へ。ある意味では時代の流れに逆行する移植の狙いを、同社代表取締役社長の谷郷 元昭氏に聞いた。

(聞き手は小林 聖=H14)

なぜ今、iアプリの開発に乗り出したのでしょうか。

写真●サンゼロミニッツ代表取締役社長の谷郷 元昭氏
写真●サンゼロミニッツ代表取締役社長の谷郷 元昭氏

 「30min.」はパソコン版のサービスも用意しています。このパソコン版を使うユーザーのなかには、スマートフォンでなく、普通の携帯電話を使っている方も多くいます。スマートフォンの市場は伸びていくと思いますが、現時点での出荷台数はまだまだ普通の携帯電話の方が多い。我々のサービスは幅広いユーザーに利用してもらうことが重要ですから、(普通の携帯電話の)圧倒的な普及台数は魅力です。

 とはいえ、これまでは公式でiアプリを出そうと思ったら、NTTドコモの公式サイトとセットで作る必要がありました。我々はスタートアップの会社で、人的リソースにも制約があります。公式サイトを作ることも考えはしましたが、やはり公式サイトとして承認をもらうために必要な労力を考えると、それに見合う価値を見い出すのは難しかった。

 しかし、今回のドコモマーケット(iモード)では、公式サイトなしでアプリをリリースできるようになりました。しかも、登録のための審査も緩和されると聞き、チャンスだと思いました。

機能開放よりドコモマーケットが重要

30min.は、GPSを利用して周辺情報を提供しており、iアプリDXの機能が必要になります。iアプリDXの機能開放もiアプリを開発するきっかけになったのでしょうか。

 もちろん、iアプリDXの機能が使えなかったらiアプリの開発に踏み出さなかったと思います。30min.はGPSだけでなく、店舗情報を提供していただいている「食べログ」など、外部サイトへのリンクも多いですから(編集部注:ダウンロード元サイト以外へのリンクはiアプリDXのみ許可されている)。

 とはいえ、もっとも重要なのはドコモマーケット(iアプリ)の存在です。マーケットがあり、そこを通して自分たちの作ったアプリケーションを使ってもらえる。その可能性が魅力です。仮に“勝手アプリ”としてGPS対応ができるようになっていても、マーケットがなければiアプリを作ろうとは思わなかったでしょう。

初めてのiアプリ開発ということですが、ハードルが高いと感じる部分はありますか?

 iアプリの開発経験はありませんが、(iアプリのプログラミング言語は)Javaですからそれほどハードルが高いとは思っていません。Androidアプリを開発した時もJavaでしたし、開発言語は壁にはならないと思います。開発費用や期間もおそらくiPhoneアプリやAndroidアプリと変わらないはずです。

iPhoneと違い、iアプリは動作対象機種が数多くあります。その点の難しさは?

 私は以前、コンテンツプロバイダーで働いていたことがあります。当時「(端末の)仕様は同じはずなのに(機種が違うと)動かない」ということは確かにありました。今のところドコモマーケット(iモード)向けのiアプリには、「特定の端末に対応しなければならない」という縛りがないようですから、とりあえず規定通りに作って、ある程度の端末で動けばいいと思っています。どうしてもうまく動かない端末は、切り捨ててしまうという手もあります。

 特に我々のアプリは、端末ごとの解像度の違いもあまり意識しなくていい。ゲームなどの場合は大変かもしれませんが、情報サイトの場合はすごくやりやすいです。

“中堅アプリ”にも日が当たるプロモーションを

iアプリにすることで携帯サイトとは違う可能性が広がる?

 勝手アプリとして他社がリリースしてきたアプリを見ると、かなりいろいろなことができそうです。

 「30min.」は携帯サイトもあるんですが、やはりサイトではできることが限られます。例えば、お店や料理の写真などを撮って載せられるのが、30min.の“売り”でもあります。携帯サイトの場合、まずサイトにアクセスして、指定したアドレスに写真を添付して送信という面倒な作業をしないと写真を載せられません。結果的に携帯からはほとんど写真の投稿がありません。iアプリにすれば、こうしたことが簡単にできる。

ドコモマーケット(iモード)に望むことは。

 プロモーションに尽きると思います。iMenu(iモードに接続した際に最初に表示されるページ)からドコモマーケット(iモード)への導線はある程度確保してもらえるのではないかと思っています。テレビCMや、NTTドコモのユーザーへのダイレクトメールなど様々な手段での告知を期待しています。

 特にアプリのダウンロードランキングなどは、どうしても一部の超定番アプリが上位の常連になってしまいます。“中堅”アプリに陽が当たる機会が少なくなりがちです。このあたりをうまくすくい上げてくれる仕組みを用意してくれるといいですね。