前回と今回の2回にわたり、クラウド環境におけるストレージ要件と、その実現に必要とされるストレージテクノロジーを説明します。
クラウドインフラとしてのストレージには、現時点で少なくともセキュアなマルチテナント環境、高度なデータ管理タスクの自動化、透過的なデータ移行、統合データ保護といった、クラウドコンピューティングに必要となる重要なテクノロジーを実装していることが要求されています。
前回はクラウドのストレージテクノロジーのうち、(1)ストレージ利用効率の向上と(2)統合的なデータ保護に関するストレージテクノロジーを説明しました。今回は残り3つの要件に対するストレージテクノロジーを説明します。
(3)サービスの自動化と管理
ストレージリソースのプロビジョニングやデータ保護など、繰り返し実施するタスクの自動化は必須です。なるべく人手を介さず、少ないリソースでより多くの容量管理を可能にすると同時に、運用効率の向上を実現するために、ポリシーとワークフローを登録可能な「タスク自動化管理ソフトウエア」がこの問題を解決します。
タスク自動化管理ソフトウエアは主要なアプリケーション(たとえば、Oracle DatabaseやMicrosoft Echange Serverなど)との連携が可能なので、これらのアプリケーションレベルでデータの一貫性、整合性を保証します。アプリケーション管理者やDBA、サーバー管理者は、特にストレージシステムの管理知識がなくともポリシーを設定し、必要なタスクを自動実行できるようになります。
また、APIやWebサービスを介して統合できることも重要になります。たとえば、NetAppのData ONTAP(ストレージ製品のOS)では、ストレージおよびボリュームリソースを、他社の管理ソフトウエアや(クラウドサービスプロバイダーによる)インハウスの管理ソフトウェアから操作できるようにするための、さまざまな言語に対応した豊富なAPIを提供しています。
これにより、インハウスの管理ソフトウエアから、APIを介してボリュームプロビジョニングや拡張、縮小、重複排除の実行、バックアップの実施や仮想的なボリュームの複製など、さまざまなタスクを呼び出すことが可能となります。
(4)セキュアなマルチテナント環境
クラウドコンピューティングはマルチテナント環境になりますので、そうした環境でも効率性を低下させずにできるだけ高度なセキュリティを実現することが求められます。
その実装技術の必要が、NetAppのData ONTAPに搭載されている「MultiStore」です。MultiStoreでは、単一の物理ストレージシステム上で複数の顧客に個別の「仮想ストレージコントローラ」を割り当てることができます。仮想ストレージコントローラは、それぞれを1台の物理ストレージシステムのように使用できます(図1)。
つまり、ユーザーが定義した境界に基づいてストレージとネットワークの論理分割を行い、プロビジョニング、移動、保護を行えるということです。仮想ストレージコントローラでは、クラウドサービスの特定のアプリケーションや顧客に対応するコンテナごとに、適切なポリシーを適用できます。
この論理分割した仮想ストレージコントローラに対応する各ボリューム単位で、そのボリュームに対する処理に必要な各種リソース(CPU、NVRAM、ディスクI/O)に対する優先度を多段階で指定可能な機能(FlexShare)と組み合わせることで、マルチテナント環境における限られた物理リソースの利用効率の最大化とセキュアな区画の維持が実現されます。
(5)透過的なデータ移動によるインフラの常時稼働の実現
マルチテナント環境において、データを移動してもほかのテナントに影響を及ぼさないようにしなければなりません。それを実現する製品の一つが、NetAppの「Data Motion」です。
これは、前述のMultiStore、データレプリケーション機能の「SnapMirror」、ストレージリソースのプロビジョニング管理を行う「Provisioning Manager」の組み合わせによって実現しています。MultiStoreによって区画された仮想ストレージパーティションに存在する仮想ストレージコントローラを、ストレージ間でサーバーやアプリケーションに対して透過的に移行できます。
この機能は、接続先が物理または仮想サーバーであるかどうかに関係なく利用可能となり、これにより、計画停止を不要にし、仮想ストレージコントローラを移行して負荷分散などを行うことで、運用を最適化するといったことも可能になります。
ネットアップ マーケティング部 部長