前回はプライベートクラウドにおいて、物理ストレージから仮想ストレージに変革することが重要だと説明しました。そこでの議論は個々のストレージ装置に関するものでしたが、ストレージ装置を個別に利用していると、業務処理量やストレージの保存効率に大きな差異が生じ、安定したサービスレベルの維持が困難で、ストレージの利用効率も低い状態となります。

 一貫性のあるサービスレベルを維持し、ストレージの利用効率を最適化する手段として、「共通プール化」があります。共通プール化を行うことで、必要な時に必要なリソースを最適なサービスレベルとコストで使用することが可能になります。すなわち、プライベートクラウドを構築する上でも非常に有効な手法となります。

 ここで言っている共通プール化は、複数ストレージ環境および時間と場所の制約を超えた環境でのプール化を指しています(図1)。こうすることにより、リソース利用効率の追求・コスト削減・ビジネス環境の変化に追従することが可能になります。

図1●共通プール化
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共通プール化のプライベートクラウドでの効果

 物理的な制約から解放されるので、場所の制約を超えた共通プール化を行うことでリソースの動的最適化を行うことが可能になります。

ビジネス環境の変化に対応
 場所が離れたデータセンター間においてストレージの共通プール化を行うことで、短期間だけ必要な業務のデータを、メインセンターではなく、利用効率が少ないサブセンターのストレージを利用するといったことができます。

リソース全体の最適化
 メインセンターでの負荷が高くなった場合、VMwareの「vMotion」などを利用して、ある業務の仮想マシンをサブセンターに移動し、ロードバランスを行うことがあります。こうしたとき、拠点をまたがってストレージを共有プール化していると、仮想マシンの移動が速やかに行えます。

新たなレベルでの高可用性の実現
 データセンター内で異機種ストレージ間での分散ミラーを行うことで、システム障害における可用性を担保できます。また、データセンター間でも分散ミラーで冗長化を行うことで、データセンター障害の対応や、一つのセンターの計画停止に対する可用性の担保になります。

 ここまで説明した共通プール化を実現する技術の一つに、EMCの「VPLEX」があります。これはストレージの仮想化とフェデレーション(連携)を実現するもので、フェデレーションは異機種混在ストレージ環境のデータセンター内およびデータセンター間において、情報への同時アクセスを可能にします。データの共有、負荷分散、冗長化を実現するとともに、必要なときに迅速に最適な場所に無停止でアプリケーションとデータを再配置することが可能です。

笹沼 伸行
EMCジャパン テクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部 マネージャ
Symmetrixディスク装置を中心としたハイエンド・ストレージ・チームのマネージャとして、各種プロダクトの日本での担当責任を担っています。EMCには、SEとして10年以上勤務していますが、今年からプロダクト・マーケティングとして、新製品の販売戦略なども担当しています。