IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

 前回までとは少し趣向を変えて、今回は、ITベンダーやシステムインテグレーターなどに勤務する“システム屋”のうち、上司がダメな場合を取り上げます。

部下と先輩、ダメな“システム屋”上司の会話
部下 「以上のようにA案とB案以外にも、C案もあると考えました」
先輩 「C案は面白いね、スピードが課題だけどコスト効果は圧倒的だ」
部下 「私も面白いと思って調べましたが、米国とインドに事例がありました」
先輩 「そうか、夢みたいで実現が困難な案でもないんだね」
自分 「そうです、このプロジェクトで採用すれば他国からも注目されそうです」
ダメな“システム屋”上司 「ちょっと待て、オレはそんな案は聞いていないぞ!」
部下 「はい、恐れ入ります。そこで今日の会議でご紹介しようと思いまして」
ダメ上司 「だから、聞いてないって言っているんだ!」
先輩 「でも彼はC案についてよく調べていると思いますが」
ダメ上司 「お前らなあ、ほう・れん・そうを知っているのか。社会人の基本だぞ。ほうというのは報告と言ってな・・・」
部下&先輩 「・・・(あああ、1時間は覚悟しなければ)・・・」

ダメな理由:相談相手を選ぶのは自由

 私自身は「オレは聞いていない」という発言あるいは怒号を聞くと反射的に「あんたには言っていない」と答えたい衝動に駆られます。

 社会人になると「ほう・れん・そうが大切」という話を聞かされます。報告・連絡・相談のことです。

 報告は上司あるいは責任者に対して行うもので、自分の報告相手は決まっています。報告相手は組織図における自分の上に位置する人であり、外資系企業なら「レポートライン」と呼んで、報告が適切でないと厳しい評価が下されることになります。

 連絡はその件の関係者全員に対して行うもので、たとえば明日の会議の場所が変更となったとすれば、連絡すべき相手は会議参加者・関係者の全員となります。漏れなく正確に連絡しなければなりません。

 ところが、相談だけは、自分で相手を選べるのです。

 転職、結婚、離婚など人生の大きな転機に当たって、誰に相談するかを想像してみてください。人それぞれであって、最も参考となる意見をくれる人、相談しやすい人に相談するはずです。

 これは、仕事の相談でも同様です。報告すべき相手、連絡すべき対象は案件によって決まりますが、相談する相手だけは自分で選べるのです。

 ところがダメ上司は「相談も自分にすべきだ」と決めつけていて、相談されなかったときに「オレは聞いていない」と怒り出します。

 どんな職場にもいるこのタイプの上司ですが、特に“システム屋”の職場には多いようです。その理由はおそらく、視野が狭く勉強不足である“システム屋”にとって経験豊富な上司は絶対的な存在であり、上司に仕えるようにして育ってきた人が多いからでしょう。

 こうした視野が狭い“システム屋”が上司の立場になり、部下が自分を絶対的な存在として尊敬していない事実に直面した時、“恐怖政治”への一歩を踏み出すのです。「オレは聞いていない」=「オレにすべて事前相談せよ」と。