1. コールセンター・システムの更新に際して,地図情報システムを初めて構築した 2. 当初は手探り状態だった要件定義を,プロトタイプ利用に切り替え推進 3. 約5年前の変換エンジンを活用し,約8500件の住所データの不備に急ぎ対処した |
「新規開発した地図情報システムが使えない事態はなんとしても避けたい」。新コールセンター・システムの稼働が2カ月後に迫った2009年5月下旬。構築プロジェクトに利用部門として参加したニチレイフーズの鈴木清隆氏(商品本部 お客様相談センター 所長)は,同システムを構成する地図情報システム(GIS)のテストで見つかった問題に不安を募らせていた。
コールセンター・システムは,消費者がニチレイフーズのお客様相談センターへ電話などで寄せる多数の問い合わせに,スタッフが効率良く回答するための仕組みである。顧客対応力の強化や業務効率の向上へ,同年7月末からの稼働を目指していた(図1)。
中でも,新しく導入するGISへの期待は大きかった(図2)。コールセンター・システム再構築に当たり利用部門の要望を取りまとめたニチレイフーズの武田亮二氏(商品本部 お客様相談センター 企画チームリーダー)は,「センターのスタッフが当社製品を扱う小売店を住所や駅名から地図で案内できるようになり,目標物や道順を伝えるといった分かりやすい対応が可能になる」と利点を語る。
しかし,GISの開発は同社にとって初めて。どんな機能を実装すればよいのか,利用部門に具体的なイメージがないところから開発はスタートすることになった(図3)。加えて,テストでは,GISへ初期登録する5万2000件の住所データのうち8500件に不備があるという予想外の課題が判明する。冒頭で紹介したのは,そのときの様子だ。
以下ではこれらの課題にプロジェクトのメンバーがどう対処したのか,その軌跡を見ていこう。