経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、ビジネスやアプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。日立製作所が主張する「IT基盤のあるべき姿」に続き、今回は、その実現に向けて日立が重要視しているテクノロジーを紹介する。(ITpro)

 日立製作所が掲げる次世代IT基盤において、その要となる日立クラウドソリューションのコンセプトが「Harmonious Cloud」である。そこでのキーワードに「安全・安心」「スピード・柔軟」「協創」を挙げている。クラウドの利便性と、これまでの企業情報システムの構築によって得た種々のノウハウを加えることで、社会インフラレベルのクラウド基盤の実現を目指している。

社会インフラを支えるクラウド基盤の要件

 企業システムがクラウド環境に移行することになっても、これまでITに委ねられてきていた「信頼性・可用性」「セキュリティの確保」「環境配慮」への取り組みは不可欠である。これらは、ITの不変的な役割であるからだ。これらの取り組みは、クラウドにおいても「変えてはならない三つの要件」に定めている。

図1●変えたいもの、変えてはならないもの双方のバランスが肝心
図1●変えたいもの、変えてはならないもの双方のバランスが肝心
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 Harmonious Cloudが実現する次世代IT基盤においても、「変えてはならない三つの要件」を維持し、当社が最重要視する「安全・安心」を支える。そのためには、種々の技術ノウハウを埋め込んできたハードウエア製品やソフトウエア製品によってクラウドを構成し、品質を保つ必要がある(図1)。

 クラウド基盤は、サーバー、ストレージ、ネットワークという物理リソースが密接に連携して実現される。そこでの物理リソースは、仮想化技術により論理リソースに展開される。論理リソースは、物理リソースと論理リソースの関係を把握したうえで、要求に応じて割り付け・制御できなければならない。

 論理リソースの状況や割り付け状況を管理する仕組みこそが、システム全体を最適な状態に保ち、かつ人手の介入をなくすことによる運用コストの低減や電力削減など環境への対応を実現するための要となる。そこでは、運用管理の経験・ノウハウが問われる。

 一方、クラウド基盤を社会インフラとして実際に活用するためには、これまで企業が物理的なIT基盤上に構築してきたシステムと同様のガバナンスが実現されなければならない。

 Harmonious Cloudでは、物理的なIT基盤と、プライベートクラウド、パブリッククラウドをニーズに応じて適材適所に組み合わせると同時に、社会インフラにも適用できるだけのガバナンスを実現する。そこでは、プライベートクラウドを確実・迅速に構築するための仕組みはもとより、プライベートクラウドとパブリッククラウドの連携を実現するための技術が不可欠になる。

 以下では、上述したクラウド実現において重要なテクノロジーについて、日立の取り組みを述べる。

ベースに信頼性・可用性を付与するハードウエア

 クラウドシステムの基本的な信頼性は、物理装置の層に信頼性が高い機器を用いることで確保できる。Harmonious Cloudを構成するサーバーやストレージとしては、信頼性・性能を高めた統合サービスプラットフォームである「BladeSymphony」とディスクアレイサブシステムを用いている。

 特に高い信頼性が要求される基幹業務システムやプライベートクラウドに適用する際には、上位モデルの「BS2000」や「BS2000fx」を使用する。ブレードサーバーの特長であるスケールアウトに加え、サーバーブレード間でのSMP(対称型マルチプロセサ)技術によるプロセサのスケールアップと大容量メモリー活用を実現することで、性能を高める。

 同構成では、システム構築や構成変更の柔軟性も高まる。I/Oスロット拡張装置やシステム拡張ファブリックにより、I/Oボードの搭載場所やサーバーブレードの配線などを変更することなく、システム要件にあわせたI/Oボードの各サーバーブレードへの割り当てが可能になる(図2)。

図2●多様なサーバーを効率的に集約する
図2●多様なサーバーを効率的に集約する
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