システム構築プロジェクトにおける業務モデリングでは、システム化の対象業務に含まれる業務機能を洗い出し、その業務機能同士の関連を「DFD(業務機能関連図)」や「業務フロー図」などに整理する。

 業務をモデリングするには、対象業務に精通した利用部門の代表者(以下ユーザー)から業務内容をヒアリングすることが欠かせない。ヒアリングによって、業務機能を洗い出したり、業務機能同士の関連を把握したり、業務の流れ(フロー)を理解したりする。

 ここで、ユーザーから業務内容をヒアリングするとき、いきなり業務フローを聞くことがある。これは、やってはいけない。ユーザーは業務機能のレベルやサイズを意識せずに回答するので、ITエンジニアにとって業務の理解や整理が難しくなるからである。

 例えば「営業の流れを教えてください」のように聞くとどうなるか。ユーザーは「まず受注活動を実施して、顧客から注文の意思を確認すると契約を結びます。次に、受注処理を行い関連部署に手配します。納品が終わったら、請求書を発行します。そして入金されたかどうか確認します…」といった具合に回答するだろう。この回答を聞いたときにはさほど違和感を覚えないかもしれないが、登場した業務機能である「受注活動」「受注処理」「請求書発行」「入金確認」を書き出して分析すると、サイズがバラバラであることがわかる。「受注活動」はサイズが大きく、「請求」「入金確認」はサイズが小さい。

 実際、ユーザーに業務フローをヒアリングしながら、業務機能のレベルやサイズをそろえるのは難しい。そこでユーザーへのヒアリングは、業務機能を洗い出すためと、業務機能間の関連やフローを確認するためという目的別に分けて行う。その方が断然、作業効率が上がる。

水田 哲郎(みずた てつろう)
日立コンサルティング シニアディレクター
1990年、日立製作所入社。製造業・流通業を中心にシステム企画や要件定義を担当。近年は、コンサルティング業務と並行して、パナソニック、キリンビジネスシステム、日立製作所グループなどでITエンジニア向けの研修講師を担当。2006 年、日立コンサルティングのディレクターに就任。2008年より現職