米Dellと米Hewlett-Packard(HP)によるストレージベンダー米3PARの買収合戦は、双方が幾度となく買収金額を引き上げる形となり、激しさが増している。

 3PARについては、Dellが米国時間2010年8月16日、1株18ドル(総額11億5000万ドル)の価格で買収することで合意していたが、同月23日にHPがそれを上回る1株24ドル(総額16億ドル)を提示、3PARの持つ高いクラウド技術を巡るし烈な戦いが始まった。

 Dellはその後、提示額を1株24.30ドルに引き上げたがこれにHPが27ドルで対抗。するとDellも27ドルに引き上げ、今度はHPが30ドルを提示した。これにより8月27日時点のHPによる買収総額は20億ドルとなった。Dellによる買収合意発表前の3PARの株価は10ドル前後。HPの提示額は27日時点でその3倍に達した。米Bloomberg Businessweekの調べによると、この割増額は2001年以降にあった過去1万9036件の競合買収提案の中で最大になるという。

 Dellの提示額は、常にHPの提示額に追随する形で積み増しされているが、これには理由がある。Dellと3PARが結んだ合意契約には「マッチングライツ」という条項があるからだ。これは「もしDellの買収額を上回る提案が第三者から出された場合、Dellがその第三者と同条件を3営業日以内に提示すれば、契約は自動的に維持される」というもの。これによりDellはHPの提示額を大きく上回る提示をしなくてもよいというわけだ。このことからDellは長期戦を計画しているのではないかと言われている。

最初に持ちかけたのはHPだった

 今回の買収劇、競合相手のDellがまとめた話にHPが後から割り込んだ格好だが、米Wall Street Journalによると、3PARに買収提案を先に持ちかけたのはHPだった。

 同紙によるとHPが最初に3PARに連絡したのはDellが買収合意を発表する1カ月以上も前の7月3日。両社はその翌週に数回の協議を重ね、7月14日にHPのMark Hurd前会長兼最高経営責任者(CEO)と3PARのDavid Scott CEOが直接会って話をしている。HPは7月23日に最初の提示額を示したが、数日後にDellが登場し、それを上回る金額を提示。Dellの提示額は最終的に18ドルとなり、その後の2週間の協議を経て公表に至った。

 Wall Street Journalの別の記事によると、HPはいったん3PARの買収を断念したが、その後意向を変え、Dellを上回る金額の検討に入っていた。しかしちょうどそのころHPは、Mark Hurd前CEOのセクシュアルハラスメント疑惑に絡む問題で揺れていた。お家騒動の真っ只中にあったHPは迅速な対応がとれなかったとWall Street Journalは伝えた。