東京海上日動火災保険は2009年4月から、求められる可用性が99.8%以下のシステムについてハードウエア保守を打ち切った。99.9%以上のシステムについても、冗長構成を取っている場合は年間保守契約を外した。故障時も業務に支障をきたすリスクが少ないと判断したためだ(図1)。

380台の保守を打ち切り、3億円のコスト削減

図1●ハードウエア保守をスポット契約に切り替える際の判断基準
図1●ハードウエア保守をスポット契約に切り替える際の判断基準
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 これらを合計すると、同社が保有する約1700台のサーバーのうち、2割を超える約380台の保守を切ったことになる。これにより、年間で約3億円のコスト削減を実現した。

 東京海上日動の基準で考えれば、国内のほとんどの企業の基幹系システムに、ハード保守は必要ないとも言えそうだ。日本情報システム・ユーザー協会の調査によれば、国内企業の基幹系システムの可用性は平均で99.79%だったからである。ハード保守が本当に必要かを、どの企業も再考する価値があるだろう。

 アサヒビールの奥山博業務システム部長も、「過去3年分の自社のトラブル事例を検証したところ、復旧のためにハード保守契約を必要とした事例はなかった」と話す。まず同社は、システム部門が所有する開発機の保守契約をやめた(前出の図1)。開発機であれば、障害対応が遅れても、事業に直接支障をきたすことはないと考えたためだ。

 東京海上日動もアサヒビールも、保守を打ち切ったハードウエアに障害が起きたときは、スポット契約の障害対応を依頼する。

 サーバー以外でも、ハードの保守を切ることでコスト削減を果した企業はある。帝人はプリンター300台の保守契約をやめ、スポット契約に切り替えた。これにより、年間700万円のコスト削減効果があった。