東京海上日動火災保険は 2009年度のシステム保守費を、予算比で5分の1に抑えた。4億円の予算を確保していた2009年度の保守費を、実際には7000万円で済ませたのだ。同社では保守案件が年間300~400件あり、2009年度もこのペースは変わらなかったのにもかかわらず、保守費をこれだけ圧縮できたのである。

「勝負」は要件を確定する前

 東京海上日動がシステム保守費を5分の1にできた秘訣は、コストの妥当性を検証するタイミングを約2カ月早めて、費用を抑えるための議論をするようにしたこと。たった2カ月だが、その差は大きかった。

 大きな保守案件では、新規開発と同様に要件定義が必要になる。この「保守の要件定義」に入る前に、費用を最小限にする会議体を設けたのである。

 会議の名称は「コスト精査会議」。要件が確定していない段階ではあるが、「もしこの要求を実装したら、どうすれば追加のハードウエアを買わずに済むか」「既存システムの機能を流用して、ソフト開発作業を減らせないか」などについて議論する(図1)。

図1●東京海上日動火災保険が「コスト精査会議」を実施するタイミング
図1●東京海上日動火災保険が「コスト精査会議」を実施するタイミング
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 これまでもコストを検証する会議体はあったが、今回のように既存のシステム資産を流用して出費を抑えるための議論はしていなかった。保守の規模が大きくなり、追加購入しなければならなくなったハードやソフトが金銭的に妥当かを判断することが主な目的だった。実施するタイミングも要件定義後だったため、融通が利かなかったのである。

 「要件が確定する前に会議を実施することで、既存のハードやソフトを利用するための調整の余地が広がった」と颯田雅之IT企画部次長兼IT予算グループリーダーは話す。

 東京海上日動は2009年4月から運用・保守費の削減を最優先テーマに掲げ、大小合わせて70のコスト削減施策を実施している。コスト精査の前倒しもこの一環だ。