PCのOSを、Windows 7に移行するときに気をつけたいのは、Windows 7に標準のメールソフトがないことだ。インターネットで無償提供されているマイクロソフトのWindows Liveメールなどのメールソフトを、ユーザーが自ら入手する必要がある。

 ここでOutlook Expressを使っていたユーザーがOSをWindows XPからWindows 7に移行したとしよう。Windows Liveメールをインストールしてすぐに起動するとどうなるだろうか。

 答えは、送信トレイも受信トレイも空っぽ。今まで使っていたOutlook Expressで蓄積した送受信メールのデータは、自動的には引き継いでくれないのだ。

 メールをデータを移すのは手間がかかる。そこで役立つのが、マイクロソフトが提供しているWindows転送ツールである。これを使えば、Outlook Expressに格納してある送受信メールのデータを含めて、PC上のユーザープロファイルを丸ごと移行できる。

 転送ツールを使った作業手順は次の通りだ。

(1)Windows XPを搭載するPCにWindows 7の起動用DVDを挿入し、DVD内部の転送ツール(migsetup.exe)を実行する
(2)Windows 7を新規インストールする
(3)Windows Liveメールをインストールする
(4)Windows 7を搭載したPCで転送ツールを再度実行する
(5)Windows Liveメールを起動する

 (1)でツールを起動すると、転送先を指定するよう求められるので、ファイルサーバーや同じPC内の適当なフォルダを指定してもよい。指定すると転送が始まり、ユーザープロファイルの移行用ファイル「MIGファイル」ができる。

 また、(4)では、(1)で指定した転送先やMIGファイルを指定する。するとMIGファイルがWindows 7搭載PCに取り込まれ、ユーザープロファイルとして格納される。(5)では、自動的にインポートが開始されて、旧環境で使っていた受信トレイなどのデータがWindows Liveメールの中に入る。

転送ツールを使った移行手順は要注意

 ここで注意したいのは、(5)を(4)より先に実施してはいけないことだ。なぜなら、Windows Liveメールは、自動的に過去のメールのデータを取り込む自動インポートを、初めて起動したときにしか行わないからだ。

 もし、自動インポートの機会を逸してしまった場合は、Windows Liveメールのメニューバーから「インポート」を選択する。インポート対象に任意のフォルダを指定することもできるが、基本的にはデフォルトのまま「次へ」を選択すれば無事Windows Liveメールに取り込むことが可能である。

 また、既にWindows 7をインストールしている場合は次のようにする。旧OSがWindows XPの場合は「C:\Document and Settings」の中に、Vistaの場合は「C:\Windows.old\ユーザー」の中に、旧環境で使われていたユーザープロファイルが残っている。そのフォルダーをさらに深くたどり、Outlook ExpressもしくはWindows Mailという名前のサブフォルダーが見つかれば、そこにメールのデータがあるはずだ。フォルダーごとデスクトップへコピーしてから、手動インポートを実施すればよい。デスクトップにコピーされたフォルダーを指定して、メールデータを取り込むことが出来るだろう。

 ハードディスクの中からフォルダーを探すときには、隠しファイルも表示するように、コントロールパネルでフォルダーオプションを変更しておく必要がある。アドレス帳はメールデータとは別のフォルダーに存在し、インポート操作も個別に試みなければならない。

 手動インポートの操作は、ユーザープロファイルを丸ごと転送してくれる転送ツールよりも、初心者には難しいことを認識しておきたい。

 ここまでWindows XPからの移行を説明したが、Windows Vistaからの移行は、アップグレード対象エディションであればWindows転送ツールを使う必要はない。アップグレードインストールを実施すれば、Outlook ExpressのメールデータはWindows Liveメールに引き継がれる。

 しかし、例えばWindows Vista Home Premiumエディションは、Windows 7 Professionalエディションへのアップグレード対象製品ではない。この場合は、Windows転送ツールなどを使ってのメールデータを移行する必要がある。

小川 孝士(おがわ たかし)
日本ヒューレット・パッカード サポートデリバリ統括本部 第一アカウントサポート本部 金融サポート一部
1997年に日本DEC(現、日本ヒューレット・パッカード)入社。IAサーバーの保守を担当。その後マイクロソフトとの協業でWindows製品のサポートに従事。現在、製造分野のお客様担当として、企業コミュニケーション基盤の運用を行っている。