データセンターのPUEを改善するには、サーバーの利用率と設備の使用効率を高める必要がある。そこで米国のグリーングリッドでは、以下の5項目を設定して、データセンターのコスト削減を提唱している。

(1)過度な消費電力、過度な発熱量、過度なスペース占有率の発掘
(2)サーバープロセッサ(CPU)の消費電力節約
(3)サーバー群の最適なサイジング
(4)使用していないサーバーの電源のシャットダウン
(5)非効率的稼働のレガシーシステムの廃棄

 以下では、グリーングリッドの上記5項目をベースにデータセンター設備の利用効率向上によってコスト削減を実証するプロセスを紹介する。データセンター管理者はこのプロセスを実行し、系統的にデータセンター設備およびインフラ機器を「見える化」することによってデータセンターの無駄をなくせる。

 このプロセスの五つのステップとは以下の通りである。
1)ディスカバリー(Discovery)
2)文書化(Documentation)
3)モデル化(Modeling)
4)コスト/節約の分析(Cost/Saving Analysis)
5)実行(Implementation)

データセンター全体の構成を自動把握

 ディスカバリー(Discovery)のプロセスでは、データセンターインフラ設備の構成を把握する。「見える化」、つまり正確なコスト分析のために不可欠なプロセスである。

 具体的には、まず、データセンターインフラ設備すべてのデータ(ファイル、図面、台帳)を収集する。インフラ設備データとは、ベンダー名、デバイス番号、デバイス仕様定格(電力、発熱量、重量、寸法)、そしてデバイスが配置されているデータセンター内のロケーションである。

 データセンターの電力供給系インフラ(PDU、UDP、ラック電源回路接続)のデータも必要である。データセンター内の、どのラックで、どの程度電力が消費されているかを知るための情報だ。そして、これら関連データすべてをレビューし、適切な分析を行うのに十分であるかを判断する。もちろん、インフラ関連でほかに必要なデータ項目が挙がれば、そのデータの収集方法も検討する。

 次に、1)で得たデータや管理項目を文書化する。分析を進めるうえでは欠かせない作業である。作業としては、まず、どの情報が文書化されているかを調査することから始める。この際、データセンターインフラを設備系インフラと電力系インフラの二つのセグメントに大別することを推奨する。

データセンター設備系インフラ情報
・ラック内デバイス(サーバー、ネットワーク、ストレージなど)
・インフラ装置(ラック、空調装置)
・フロア配備(ステージング類)
・データセンターとラックごとのキャパシティプラン情報

電力系インフラ装置の情報は以下の通りである。
・UPS/電源
・PDU
・デバイスとラック内の接続回路

 次に、エネルギー情報をキャプチャーする。グリーングリッドが提唱する以下の計算式を使って、電力使用率を算出する。

 過負荷状態(Pmax)と無負荷状態(Pidle)で1台のサーバーの消費電力を測定し、これを基にすれば十分な精度の数値を得られる。これらの測定値が収集可能になれば、あるCPU使用率で消費電力がどの程度になるか予測が以下の計算式を用いて算出できる。例を挙げて説明すると、サーバーの最大電力値が300Wで、無負荷時の値が200Wとすると、5%の電力使用率では消費電力はおよそ205Wになる。

このサーバーが、この使用率で24時間稼働したとすると、使用エネルギーは4.92kWhとなる。

 データがそろったら、今度はデータセンターの運用コストのうち、潜在的に節約できるところを探す。典型例がサーバーである。グリーングリッドによれば、データセンターに設置されたサーバーの多くはx86チップを搭載したモデルだという。つまり、x86チップ搭載サーバーはデータセンターで電力節約の最も大きな潜在的コンポーネントであるといえる。

 そこで、前述の設備インフラデータとして、以下のような情報を登録しておくとよい。
・メーカー名、モデル名、シリアル番号
・装置タイプ、サーバー、ストレージ、ネットワークなど
・使用年数または置き換え期日
・物理的なロケーション
・顧客定義の属性情報

 こうしたデータをデータベース化すれば、データのモデル化と分析が容易になる。データセンターの管理者やユーザーは、このデータを基に、より効率性の高い装置に置き換えたり、不要な装置を廃棄したりといった判断を下せる。例えばサーバーを最適にサイジングできれば、結果として電力を節約できる。空調も、発熱と電力のバランスを考えて最適化すればよい。